「税金を少なくしたい」は正常な感覚

二つの最高裁判決

税金に関して重要な判決が昨年と今年相次いで出された。

1つは2月18日、最高裁判所は武富士の株式を創業者から長男の専務へ贈与した贈与税の課税を取り消し、還付加算金を含めて2000億円という巨額な税金を還付をすることを認めた。

もう1つは昨年7月6日出された判決である。内容は年金受給権を相続財産とみなし、相続税を課税し、その受給権に基づいて年金を受け取った時にさらに所得税を課税していたのであるが、最高裁判所は相続税と所得税の二重課税であるとして所得税の課税を取り消した。

武富士事件は租税法律主義を厳格に適用することを求め、年金受給権事件では、年金に課税することを定めた所得税法の解釈に誤りがあったことを認めたものである。

武富士事件のように巨額な税額ではないが、これにより税金の還付を受ける人が何十万人にも及び社会的な影響が大きい判決であった。

「税金を少なくしたい」 は正常な感覚

武富士事件のような巨額な税額ではなくても、誰しもが「税金を少なくしたい」と思っているのはひとつの事実である。

たとえば、会社を設立することはその典型的な1つで、個人事業が成功して法人にすると、個人の所得(事業所得)が「法人の利益(法人所得)・給料(給与所得)・地代家賃(不動産所得)・配当(配当所得)・貸付利子(利子所得あるいは雑所得)」に分解され、法人課税額と個人の所得課税額の合計額が個人事業の場合の個人課税額よりも少なくなることが多い。

このように税金が少しでも少なくなる方法があれば、安い方法を選択するのは経済人であれば当然のことであり、法律に従って税金を安くするには税金を課税する要件を納税者自ら判断できるようにように明確でなければならない。憲法 84 条で租税法律主義を定めている所以である。

納税者の節税権

しかし、現実の税務の執行では税法の規定があいまいで解釈に委ねられている部分があまりにも多い。

1つ1つ挙げることはしないが、武富士事件のように当事者に「税金を安くしたい」という動機があれば、要件が整っていても課税するということが行われているのである。「税金を少なくしたい」という内面の意思を問題視し、国民がそれにより「後ろめたい」思いを抱く ようであれば、それは取り除くようにしなければならない。

OECD諸国の大多数の国では「納税者権利憲章」を定めており、その中には「あなたは、自らの税金が法律に求められる最小限度を支払う形になるように調整する権利があります」と 納税者の節税権をハッキリと認めている国もあるのである。

税金はゼロにはならない

「税金を安くしたい」は正常な感覚とはいって も、正常な経済活動を行って行こうとすると税金はゼロにはならない。利益がでなければ税金は払わなくても良いが、お金を残そうと思えば税金は払わなければならないのである。経済活動を行っていくには税金はコストと割り切って成長と発展を目指すことが望ましい。

所得税、法人税、消費税は全て収益や取引を基礎として課税されているのであるから、税金をゼロにすることを考えずに、お金を残すコストと考え、個人と法人、自分と家族、目先の税金ではなくトータルな視点で「税金を安くする」仕組み、「お金を残す」仕組みを作るようにして節税権を行使しよう。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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