リスクカードに備えはあるか?(その2)
政権交代
一昨年の新年号(平成20年1月号)で「リスクカードに備えはあるか」というタイトルで書いたが、その年9月に百年に一度と言われるリーマン・ショックが起き、平成21年前半は振り回された。
その結果年末直前11月20日に政府は、月例経済報告で「日本経済は緩やかなデフレ状況にある」、と3年5ヶ月ぶりにデフレ宣言をした。
また、日をおかずにドバイ・ショックが起きて、途上国の先行きに見直し機運が出てきて、世界のお金が日本の円に向かい、日本の実力に似合わない円高で新年を迎えることになった。
最大のリスクカードは民主党の政権担当能力
冒頭のようにいろいろな波乱要因(リスクカード)が見えてきているが、昨年9月に政権交代が起きて大きく流れが変わり、波乱要因がさらに増幅された。街の一税理士がとやかく言うことではないが、最大のリスクカードは民主党の政権担当能力であろう。
例えば
①デフレ宣言に対する成長戦略が見えないこと
②63年ぶりに国債発行が租税収入を上回る事態に対して、対応策が見えないこと
③事業仕分けに始まる民主党の予算編成の先行きが見えないこと
④ドバイ・ショックによって生まれた発展途上国への不安感と円高による国内経済の低迷に対する対策の不透明感。
これらに十分対応してくれるのだろうかという不安感、不透明感である。また、この意味でこれから予定されている
⑤参議院議員選挙の行方なども気に係ることである。
止まらぬ国債増発圧力
平成21年度の財政は、破綻の様相を見せて、国債発行53兆円、租税収入を上回る国債発行は昭和21年終戦直後以来63年ぶりとのことである。
この「昭和21年」から連想するのは、終戦直後のハイパーインフレとドッジラインによる緊縮財政、財産没収に近い財産税や農地解放、新円切り替えなどである。私がまだ子供であった頃、祖母の財布から5円を持ちだして駄菓子屋へ飴を買いに行ったことを思い出した。
それは、祖母が一生懸命掛けていた保険が満期になって受け取った5円であった。掛けていた時はそれなりに価値があったのであろうが、満期になった時は飴玉を買う駄菓子代に消えてしまったのである。
民主党政権は「ゆりかごから墓場まで」政策をとっており、国債増発圧力は高まるであろう。福祉は経済が満たされて始めて成立するものである。福祉は必要だが、これを優先させれば遠からず財政は破綻する。
デフレのあとに何が来る
11月にデフレ宣言が出たが、民主党政権は前政権の政策見直しとして、テレビの前で「事業仕分け」を華々しく展開した。八ッ場ダムをはじめ公共工事をバッサバッサと切り捨て、マニフェストをあたかも水戸黄門の印籠のごとく振りかざして、国民の喝采を浴びたところである。
しかし、その後の予算編成や普天間問題を見ると、戦略無き政策集団の印象を拭いきれないのは私だけではないだろう。
デフレの中で進行する国債増発の後に来るものは何か、エコノミストや学者の説くところでは、
①増税
②ハイパーインフレ
③新円切り替え
④その後に来る経済崩壊
といわれている。今年7月に予定されている参議院議員選挙で過半数を制すれば、絶対多数を握って4年間政権担当を保障された民主党政権は、どのような運営をするのであろうか。
リスクカードにどう備えるか
今年は、以上に述べたような内外多様な要因が入り混じる乱気流の中に突入し、場合によっては巷間では「二番底」も囁かれている。リスクカードを引いたときの心構えはできているだろうか。リスクは避けることも、確実に予測することもできないので、リスクに遭遇した時にはどう冷静に対処するかにかかっている。
昭和25年朝鮮動乱という神風が吹いて日本が救われた。今度はどんな神風が吹くのだろうか。今年が地獄への入り口にならないように、私が子供の頃に経験したことが再現しないことを祈るばかりである。
税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三
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