厳しさを増す中小企業(続)

地域金融機関の景気動向調査

No114_163319757月末から8月初にかけて川崎信用金庫情報調査部の方と横浜銀行の浜銀総合研究所調査部の方からそれぞれ金融機関として行っている景気動向調査の話を聴く機会があった。

川崎信用金庫は独自で行っている「川崎市内中小企業の動向調査」(Community Report:2008年8月・Vol・166)によると、平成18年6月をピークに、それまで水面下ではあるが回復基調にあった業況が、緩やかに下降し始め、平成19年6月から急速に落ち込んでおり、次期見通しはさらに急激な落ち込みが見込まれている。総評は「原材料価格の高騰で景況感はさらに悪化」となっている。(図参照)

浜銀総合研究所は日本銀行横浜支店の「短観(神奈川県分・2008年6月調査)を基に「県内企業の景気動向について」というタイトルであった。その調査結果は『当社の「企業経営予測調査(2008年6月調査)」によれば、県内中堅中小企業の景況感は3月調査に比べて大きく悪化した。県内企業の景況感は悪化が続いている。』とのことである。

なお、地元川崎の景況感については「神奈川県を上回る川崎市内企業の景況感」として『川崎市内企業の業況判断DIは3月の▲3から▲14と大きく低下した。さらに9月の予想も▲16と引き続き低下が見込まれている。しかしながら、県全体の水準は上回って推移している。』とコメントされていた。

戦後最長景気終る

一言で言えば、中小企業景況感は急速に低下しているが、全国に比べて神奈川県はまだマシで、川崎は県内でももっとマシだ。「我々川崎で仕事をしているものは悪いとはいえまだ恵まれているよ」ということである。

このような講演を聞いた数日後、政府の8月の月例報告が発表された。それまでの基調判断を小泉内閣が発足した平成13年以来7年ぶりに「弱含み」に変更した。

これを受けて新聞は一斉に景気の後退局面入りを報じ、日本経済新聞8月8日「戦後最長景気終わる」との見出しで、社説では「外需依存経済の限界を示した景気後退」との見出しが出ていた。

また、8月15日の日本経済新聞によれば「日米欧景気後退色」としてユーロ圏初のマイナス成長を報じており、世界総崩れと言った状態を呈している。

これからどうなる?

景気後退の原因は①サブプライム問題に端を発したアメリカ経済の失速、②原油、食料価格の高騰③消費の低迷などが挙げられている。とくに消費の低迷は4月のガソリン騒動や年内に始まった食料品をはじめとした値上げが原油価格の高騰により公然化した。

しかし、冒頭にも書いたように既に平成18年6月から景気の収縮が始まっており、これは定率減税の廃止にはじまる実質増税や、国民年金保険料の引き上げ、後期高齢者保険料の年金からの源泉徴収など年金生活者の生活を直撃し生活の不安を増大させてきた。

また、賃金や給料もニート、日雇い派遣労働者問題に象徴されるように、消費の源泉である賃金は基本的には緩やかな減少トレンドにあり上昇は望めないと覚悟しておく必要がある。

このように現役世代の賃金、年金世代の実質受給額の減少を肌で感じている国民は生活防衛策として消費を切り詰め始めている。

8月8日の報道の中で、回復が正式に途切れた時期を判定するのは、来年年初になるとの見込も報じられている。政府は議会を通じて予算と言う手段を通じて政策を実行する。いつも不思議に思うのは、そのタイムラグをまったく考慮せず、政府の対策が遅れるように見えることである。

昨年末に景気後退のシグナルが出ていたのを8ヶ月後に確認をして、それから対策を立案してさらに数ヶ月かけて政策を実施する。一年後に対策を発動しても後手後手に回り、あるいはオーバーアクションになって、車の後押し状態になってしまいかねない。これはバブルの崩壊時期に何度も経験したことである。

このような中で、福田内閣は財政再建路線をとる内閣改造を行い早々と消費税増税に向けた姿勢を鮮明にした。

私たち中小企業は①コストプッシュ・インフレ②社会保障費を含めた増税による消費抑制による景気の厳しさを前提とした経営を心がけなければならない。

No114_16315646

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川  湧三

 


神奈川県川崎市で税理士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします


お問い合わせ