東京都営銀行

鋭い問題提起

石原東京都知事が中小企業への資金を供給する新しい銀行の設立を発表した。前号でも書いたが、中小企業への貸し出しは減少する一方で中小企業や地方は金回りが極端に悪くなっている。地方の中には地価が二十分の一にも下落してしまったところもあり、中心商店街がシャッター通りと化したところも数多いと聞く。

中小企業の自衛手段として、かつて銀行が床柱を背に座った頃に中小零細企業の間で盛んに行われていた「無尽」や「頼母子講」を真剣に考えなければならないのではないか、と本欄の片隅に何度か書いた。

このような中で東京都の銀行設立構想は政府の経済政策に対する鋭い問題提起であり、東京都といわずすべての自治体が銀行の設立にチャレンジしてもらいたいと望むものである。

銀行の新しいビジネスモデル

日本にはいままで欧米にある「投資銀行」というジャンルの金融機関がなかった。東京都の銀行ビジネスモデルは、土地担保に頼らず中小企業のビジネスリスクを評価したうえで、リスクに応じた金利を設定し貸出を行い、この貸出債権を一定のロットにまとめ投資家に売却していくところに新しい発想がある。東京都の銀行構想はこの投資銀行に似通ったものを感じるのである。

都営銀行は成功するか

東京都の銀行設立構想は鋭い問題提起として歓迎するが、成功するかどうかは未知数である。貸出債権を投資家に売却するには、貸出先の評価、貸出対象ビジネスの評価能力などさまざまなノウハウが求められる。

銀行の安全性を重視すれば中堅中小企業への貸出は可能かもしれないが、零細中小企業にまで資金が回るかどうか甚だ疑問である。

リスクが高い零細中小企業への貸出を積極的に行おうとすれば貸出金利が高くならざるを得ず、高金利に零細中小企業が金利負担に耐えられるかどうか心もとない限りである。

もう一つのオプション・地域通貨

地方経済の低迷に対して加藤寛前税調会長は地方に通貨の発行権を与える地域通貨を提唱されている。地域通貨とは耳慣れない言葉であるが江戸時代の藩札を思い浮かべれば判りやすいかもしれない。

地域通貨は1930年代に通貨の不足を補う補完通貨として発行された。当時とは異なり、いまは「金余りに中の資金不足」の状況にあるが、通貨不足が生じていることは誰でもが認めているところである。

都営銀行に地域通貨の発行権

地方経済の再生や、いま活きている企業をこれ以上悪化させず、新たな不良債権化を防ぎ、更には企業を活性化させるには都県営銀行に地方経済活性化と中小企業再建機構としての役割を担わせる必要がある。

都営銀行を成功させるには、このような役割を持たせ、新たな金融システムのチャネルを作るためにも補助通貨としての地域通貨の発行権を認めてはどうだろうか。

(小川 湧三)

 


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