金余りの中の資金不足

新日銀総裁への期待

新日銀総裁の選定に当たってはデフレ脱却が出来る人が求められた。デフレ脱却に向けて政策転換が図られた感がある。しかし、政策転換の明確なサインを出さずに行っているためにムードだけに終わっている。大幅な財政支出を求めるもの、インフレターゲット、円安誘導などデフレ脱却に向けてさまざまで多様な提言や政策が議論されている。

デフレはなぜ生じたか

平成デフレの始まりは、バブル潰しに始まるデットデフレーションによる衝撃が大きかったのと、その後に続く、ソ連・共産主義社会の崩壊により東欧への輸出需要の減少が直撃し、需要不足によるデフレを加速させた複合デフレである。

お客さまの倒産や企業縮小が始まったのはバブル規制よりも輸出に関連する下請け製造業からであった。西ドイツが東ドイツを併合しその後経済の停滞に苦悩しているのと同じことが日本にも起こっていたのである。

企業の生き残りをかけた東南アジアへの工場移転が産業空洞化を促し、遂には2001年中国のWTO加入をキッカケに不可逆的な工場移転がはじまった。そのうえに、追い討ちをかけるような米中枢同時テロで、中小企業の経営者は完全に止めを刺された感がある。

金余りの中の資金不足

バブル潰しで一番ダメージを受けたのは金融機関が担っている金融システムである。大量の不良債権を作ったのはバブル潰しを行った金融政策による。いま、構造改革と称して金融機関が抱える不良債権の処理を進めているが、「クルマの後押し」もいいところである。

重要なのは不良債権をどうするかではなく、金融システムの機能をどのように回復させるかである。日銀はデフレ対策として大量の資金を供給しているが、その資金は需要創出には回らず、もっぱら国債の購入に向けられている。

そのうえ、本来金融機関が担うべき間接金融のみが資金調達ルートである中堅・中小企業ヘ必要な資金が流れず、逆に貸し渋り・貸し剥がし・回収強化といった信用収縮をもたらしている。金融システムが機能しない「マクロ金余り、ミクロ資金不足」とも云うべき状況である。

デフレ脱却に向けて

不良債権処理は必要だが、新たな不良債権が発生しないようにすべきだ。不良債権の発生は、地価の下落、株価の下落による。これに更に賃金下落も新たに加わった。これらはすべて企業の利益が改善されない限り下落は止まらない。資産劣化の根本的な対策は産業の活性化であるといわざるをえない。

現在利益を出している中堅・中小企業でも、借入金の返済と納税でキャッシュフローベースではマイナスになっている企業が多い。産業の活性化は、これら間接金融に頼らざるを得ない中堅・中小企業を中心とした「ミクロ資金不足」企業ルートへの直接必要な産業活性化資金の供給である。

このためには「産業復興金庫(仮称)」を創設し、不良債権処理基準とは逆の「逆選別」による超長期の資金供給を行うべき時期に至っていると考えるものである。

(小川 湧三)

 


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