個人国債

個人国債

政府が個人国債の発行を始めた。第二回目の国債は初回の1割の申し込みしかなく500億円が売れ残ったそうだ。

これまで国債は金融機関や機関投資家が主たる購入者であったが入札割れを起こすなど機関投資家等だけでは消化しきれなくなってしまったため、個人金融資産1400兆円を取り込もうと個人向け国債を発行することになった。

国債は金利が上昇すると元本の価格が下がるためリスクが大きいとの批判もあり、そのため変動金利国債も発行することになったそうである。

思い出す戦時国債とハイパーインフレ

私は終戦のとき小学生だった。戦時公債や貯蓄保険が紙くずのようになるのを見た。父母や祖母が爪に火を燈すようにして一生懸命国の奨める国債や保険を買ったその国債や保険が満期になって受け取った保険金は飴玉を買うのにやっとだった。一生懸命努力した結果が終戦後飴玉一つに変わってしまったのである。

ハイパーインフレというとドイツのハイパーインフレが有名だが、敗戦という特殊事情があったとはいえ戦後の日本にもあったのである。

国債発行額とGDP

日本は橋本政権、小渕政権のときに景気対策として大量の国債発行に踏み切った。国債と地方債・財政投融資債を合わせると2001年度末では648兆円にのぼり、既にGDPを遥かに超えて、なお増加の勢いは止まらない状況である。

その結果日本の国債はアフリカのボツワナ並みの格付けになってしまった。またデフレ脱却のために積極財政を主張する論者に対して、逆に国債を帳消しにするハイパーインフレの到来を危惧する人も根強くある。

政府が鉦をたたくとき         

小泉政権は、国債発行枠30兆円を自らの公約として財政再建と規制緩和を政策の両輪として発足したが、結果的には株価時価総額では150兆円をこえる減少をもたらしている。

政府では個人金融資産をリスク資産や有価証券への誘導しようとしている。個人国債もその一環である。土地バブルの基になった国土利用計画や冒頭に述べた戦時国債ではないが、いま、国債暴落論やハイパーインフレの可能性が論じられているとき、政府が鉦や太鼓ではやし立て個人国債を売るのは危険な兆候と思うのは思い過ごしだろうか。

証券税制の基本は綜合損益通算

個人金融資産を預金からリスク資産へシフトさせるために政府は証券税制を改正し、所得である配当とキャピタルゲインである譲渡所得を一括して金融資産所得として課税することとしたが小手先のテクニックとしか映らない。

個人金融資産をリスク資産へ向かわせる基本はリスクの取れる税制にすることである。有価証券間の損益通算という姑息な手段ではなく所得相互間における損益通算を認めることが所得課税の原則にも適うものである。

(小川 湧三)

 


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