行く先の見えない年金改革

年金問題

衆議院議員選挙が終わった。選挙の争点の一つに公的年金もなった。少子化と長寿社会を向かえて年金財政が破綻しかけていること、年金資金の運用が不透明なこと、国民年金の掛け金の未納付率が30%を超えていることなどの危機感からである。

公的年金の仕組み

公的年金の考え方には ①現在の受給者を現在の基金拠出者が負担する「世代間扶養」と ②年金受給者が年金原資を拠出して積み立てる「積立金方式」の二つに大別される。さらに ③基本的な生活を維持するに必要な部分を税金で付加して受給額を嵩上げし厚くする方法がある。

日本では国民が原則として誰でもが受給できる国民基礎年金と掛け金に比例する報酬比例部分(企業負担分を含む)からなる厚生年金からなっている。10月15日の日経の特集「年金を問う」によれば“60歳無職「年収1000万円」”とあるように年金貴族もいれば、満額受給できて年額804,200円の国民基礎年金だけの自営業者などもおり同じ年金といっても天と地ほどの格差がある。

政府はどこまで信頼できるか

いま行われている公的年金の論議では年金受給額を年収の50%に引き下げても、そのための年金拠出金は年収の25%が必要になるといっている。25%も拠出するのは負担が重過ぎるので20%を上限にしたい、パート収入にも負担させたいという修正案も出ている。

しかし、高齢化社会の到来が早くから予測されていたにもかかわらず北欧の高齢化先進国に学ばず、対策を先延ばしにしてきたこと、グリーンピア事業に見るように今までの積立金の運用内容が不透明なことなど官僚制度のもとに管理されている年金制度に無理があり信頼感が欠けている事である。

国民年金の保険料の未納付率が30%を超えるなどは政府に対する信頼感の欠如感のあらわれではないだろうか。

年金制度はどうあるべきか

公的年金が必要なことは誰も疑うものはない。政府が保証すべき年金は生活保護費を上回る国民基礎年金だけで十分である。

報酬比例部分は受給者拠出型の積立方式によるべきであって、政府が行うことは、積立拠出額の最低額、企業のマッチング拠出などの制度的保証と運用管理コストを負担することである。

年金制度は昭和36年の始まって既に40年経過した。年金受給額の「世代間扶養」や税負担は年金制度を創出するとき経過的に考慮すべきものであって年金議論の中核とすべきものではない。「世代間扶養」に基づく年金財源の調整は既に完了していなければならないものである。

いまだ年金財源の確保されていない「見えざる債務」が450兆円にも達することは公的年金制度の設計や年金原資の運用に欠陥があったことを示すものであって公的年金制度について小手先の手直しで終わらせず抜本的な改革を望むものである。

(小川 湧三)

 


神奈川県川崎市で税理士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします


お問い合わせ


 

行く先の見えない年金改革” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。

会長

次の記事

景気の行方