第54回 ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❻
情報セキュリティ連載
第54回 ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❻
4 メタバースは数十億人の大きな仮想大国になる

前回は、ステーブルコインの影響についてお話させていただきました。ステーブルコインの普及は金融システムをかえるだけでなく、国家の通貨覇権にまで影響を及ぼす可能性があるお話をしました。今回は個人のデータがブロックチェーンと結びついた場合についてのお話です。
★ ブロックチェーン技術によりサービス提供のプラットフォームが変わる
タイトルを「メタバースは数十億人の大きな仮想大国になる」としましたがGoogleやMetaに収集されているような個人データはブロックチェーン技術で独立させたデータベースに保管利用することが技術的に可能になりました。ブロックチェーン技術により分散化されたデータをつなげることができ、必要に応じてつながることが可能となります。そこからインターネット上にコミュニティのような分散化されたグループが複数出来上がり必要に応じてそのグループに参加するようなイメージです。
個人データが企業ごとに集約されている従来のインターネットでは企業や管理運営団体の状況に左右されますが、ブロックチェーン技術が組み込まれたインターネットでは個人ユーザーが1つのネットワーク上に参加し金融サービスやゲームなど使いたいサービスに接続して、ネットワーク上でのサービスの利用を可能にしました。例えば、1つのネットワーク上に個人も企業サービスも参加して、データのやり取りや自分が利用したいサービスを利用するというものです。このことからネットワーク上にコミュニティのようなものが形成され、自然と仮想の経済圏のようなものが形成されていくイメージです。
ここからタイトルを大きな仮想大国になるとしました。
ではこの参加型のネットワークは実現していくのでしょうか。
★ Web3という概念が生まれたきっかけ
まずこの参加型のネットワークは分散化されたインターネットという概念でWeb3と表現されます。このWeb3に対し、Web2というものがあります。Web2とはGoogleやMicrosoftと言った米国のIT企業が主導してインターネットの世界を開拓し、結果としてIT企業が個人のデータを含む様々なデータを保持、それをもとに収益を上げる構造をインターネットの世界にもたらしたインターネットの形をいいます。Web3は、IT企業等に取られてしまった個人データをブロックチェーン技術を使い分散化させ個人が管理できるインターネットの世界を作ろうという考えから生まれました。ブロックチェーン技術が生まれたためWeb3という概念ができたのです。
★ Web3は実現するか
Web3を提唱したギャビン・ウッド氏は巨大IT企業から個人データを自分で守るという意味合いで提唱しておりブロックチェーン技術を使えば理論上可能です。
Web2の世界が発達したのは、いうまでもなくApple、GoogleなどのIT企業がインターネット拡充やスマートフォン開発など莫大な投資を行ったゆえ、便利なものになり世界中の人が利用するようになりました。この開発がなければインターネットは今のように便利なものにはならなかったでしょう。Web3が提唱するインターネットはブロックチェーン上にデータを構築して必要に応じて必要な情報を利用するというものです。確かに、ブロックチェーン上であればデータの改ざんも難しく、1つの巨大企業に個人データを提供しないでインターネットを利用することが可能です。
ではそのブロックチェーンの安全性は本当に保たれるのでしょうか。
ブロックチェーンのデータの安全性はそのネットワーク参加者に委ねられます。そのため合意形成はトークンと呼ばれるネットワークに必要なモノの保有数に応じて変化します。
従って、トークンを多く保有する者がそのネットワークから抜けたりすると不安定になる欠点が存在しますし、ネットワーク保全上、1人が多くトークンを保有すると1人の意志が反映しやすくなり、公共性に懸念が生まれます。
★ Web3はWeb2と融合される形で形成がされていく
上記のようにブロックチェーンの問題点は1人が多くのトークンを持ってしまうとそのものに意志が反映されやすい形になりやすいという欠点を抱えています。せっかく分散化することができるのに分散化により独占化が起こる危険性をはらんでおりWeb2の方がむしろ安全ではということにもなりかねません。従って独占化が起こりにくい形で形成されるWeb3が一番望まれる形だと思います。
Web3が発展する上で公平性を保全できるネットワークの提供という問題をどう解消するかということが課題となりますが、ここで一定の解決方法が提示できればWeb3のネットワークは広がっていくでしょう。
ネットワーク上に参加するサービス提供者が増えれば自然とトークン保有による独占化はなくなるので、独占化が起こるようなサービスは自然淘汰されることからもWeb2のWeb3化は進んでいくと思います。
今回のタイトルにある「数十億人の大きな仮想大国」は1つのネットワーク上にユーザー、メール、SNSなどツールやサービスが接続することで可能となります。この分散化されたデータが必要に応じてつながることができるインターネットの世界はIT巨大企業だけではなくその他の企業にもビジネスチャンスを生みます。ブロックチェーンの分散化技術はインターネットのサービスの形も変えようとしています。
次回はWeb3が広がったインターネットのサービスのあり方やセキュリティ対策が変化していくことについて取り上げたいと思います。
※ 本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも記事の内容として記載したものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。
《参考文献》
『Web3熱狂と不信(2)脱GAFAじわり(迫真)』2022年9月21日付日本経済新聞

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