預金封鎖はいつ始まるか


物騒なタイトル

この物騒なタイトルは河村小百合氏の「日本銀行我が国に迫る危機」による。氏は第6章「事実上の財政破綻になったら何が起きるか」で、昭和21年~22年に実施された「預金封鎖」「財産税」「ペイオフ」「戦時補償特別措置税」などが実施された経緯を詳細に検討され、「現在の我が国への教訓」として、増税が消費税や所得課税で足りず大規模な財産税を実施しなければならない場合には、「課税資産の流出を防ぐため、預金封鎖を先行させ、あとから課税する、という政治的な手法がある。その際、通貨交換を同時に実施すれば、タンス預金による抜け穴を防ぐことも可能になる。」と述べている。

日銀体質の危うさ

経済はあらゆるセクターが連なっており特に危機に弱いところは金融機関であったり、不動産であったり、仮想通貨の世界であったり、国力を表す為替であったりする。しかし、河村氏は日本においては今回の経済の鎖の輪の一番弱いところは「日本銀行」だと指摘しているのである。同様な指摘は藤巻健史氏もしている。

河村氏はその理由を「政府と日銀を一体化させて考えれば、黒田日銀が異次元緩和に踏み切る前は、政府が民間に対して直接、国債を発行して、その維持コストである利払費を長期間、少額で済ませられることが確定していたことになります。ところが、今ではその国債のかなりの部分を日銀が買い入れてしまったことで、政府が民間から資金を借りるうえでの接点は日銀になってしまいました。しかもその維持コストは国債の固定金利方式での利払費ではなく、日銀の当座預金への付利コストという変動金利方式に形を変えてしまったのです。」と指摘している。

この構図は次に述べる金融機関の破綻の構図と同じであり、金利上昇の局面になれば金利負担が急増するため日銀の財務体質が破綻状態になると警告しているのである。

危険な兆候・金融機関破綻

3月20日付日本経済新聞に「低金利継続が招いた惨事」という記事が出た。12日にシリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャー・バンク、ファースト・リパブリック銀行が破綻し、さらに、ヨーロッパに波及しスイスの名門クレディ・スイスが破綻、UBS銀行に吸収されて消滅してしまった。

これについて、この原因を「SVBの破綻は巨大な『キャリートレード』の失敗に似ているということだ。キャリートレードは低金利で借り入れた資金を高利回りの投資で運用して利益を上げる手法だ。」

「だが、考えが甘かったのはテック業界だけではない。異常なほどの低金利が10年も続いたことで多くの投資家が低金利を普通だと思うようになった。キャリートレードはあまりにも常態化し、意識すらされなくなった。失敗するまでは」と。

日銀の政策乖離は続く

銀行破綻を受けてFRBやECBなど金融政策当局の政策に変更があるのではないかと思われたが、根強いインフレ基調にあるためFRBや各国の中央銀行は利上げを継続し3月FRBは0.25%、ECBは0.5%の利上げを引き続き実施した。

しかし、日本銀行は総裁、副総裁の交替があったとはいえ、従来の路線を変更することはできず、海外との金利差は益々乖離するばかりである。
発行国債の52%も保有する日本銀行は記事にあるように長期の低金利の罠にはまって身動きできない状態に陥ってしまったと河村氏は指摘したのである。

時やよし新円切替

昭和21年の預金封鎖による新円の切り換えは極秘裏に進められたために新円の印刷が間に合わず、旧札に証紙を貼って新円の代替えにしたことが紹介されていたが、私もその当時のことを鮮明に記憶している。上皇の生前引退宣言で新天皇が誕生し「令和」に改元された。政府がこれを奇貨として改元記念紙幣を発行することを宣言し、2024年、令和6年から流通させることが決定した。

「福沢諭吉」の紙幣は昨年9月で印刷が終了し、新紙幣「渋沢栄一」の印刷が始まっている。来年には全国一斉に新円に切り替えられる量が準備完了することは間違いあるまい。

終戦直後のように、「証紙」を貼って新円とみなすというようなことはせずに済むように準備は万端ととのったといえよう。

アメリカ、ヨーロッパでの金融機関破綻は根深くいつ日本に飛び火するか不明だが、いつ「預金封鎖」あるいは「旧札停止」による「通貨交換」が実施されてもおかしくはない情勢になってきた。

 

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代表 小川 湧三

 

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