一日百万回

菅首相の大号令

待ちに待ったワクチン接種が始まった。ワクチン接種はスピードが大事だ。速ければ速いほどよい。菅首相はワクチン接種の初動がもたもたしていたのに対して、堪忍袋の緒が切れた感じで、自衛隊を動員しワクチンの大規模接種会場を設営したり、今度は「一日百万回接種」の大号令をかけている。以下は一日百万回を伝えた産経新聞(5月30日)の記事である(太字は筆者)。

『新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、菅義偉首相は自身が掲げる「65歳以上の高齢者接種の7月末完了」の実現に向け、政府を挙げた総力戦で臨んでいる。あえて高めの目標を設定し省庁や自治体を動かそうとする「菅流」には不満も漏れるが、首相は意に介する様子はない。自治体の要望にも耳を傾けつつ万全の接種体制を整備する意向で、1日100万回の目標も「(実現が)見えてきた」と自信をのぞかせる。』

やればできる

6月24日の報道によれば、「発表ベースでは2日連続で政府が目標とする「一日百万回」を上回った」という。
やればできるのである。大規模接種会場にしても、自衛隊に指示を出し設営することができた。ワクチン接種に賭ける菅首相の意気込みが聞こえてくるようだ。遅まきながら菅首相の指導力の賜物と評価するところである。

しかし、事務方の運営は今一つ、大規模接種会場では市町村でやっている一般国民対象のワクチン接種について、地域範囲を広げて実施したが、高齢者介護や子供の保育などに従事する人、学校関係者、交通運輸従事者などのエッセンシャルワーカーと言われる人々を指定し、対象を広げた方がよかった。

大企業向けの職域接種も始まったが大企業以外の中小企業団体など経済の最先端を担う人々は所属団体等を通じて大規模接種会場で優先して欲しかったと考えている。

専門家の不作為

感染症の専門家はコロナウイルスは感染しても数日間は発症せず、しかも、発症前直前が感染力が最も強くなることを知っている(2月号参照)のである。

感染を予防するには、人の行動を抑制する以前に、未発症感染者を見つけて隔離することが感染抑制に最も効果があること、その必要性を知っているにもかかわらず、未発症感染者を検査し隔離する対策をとらなかったのは専門家の不作為と言っても過言ではない。

雑誌『選択』の今年6月号に掲載された『日本迷走の諸悪の根源』・『コロナ「尾身茂」という国難』という記事がもし正しいならば、専門家がコロナ感染者を見つけ出す検査を進言しなかった責任は重い。

一日百万人

ワクチン接種で「一日百万回」が可能であれば、私のつたない「抗原検査」の体験でも20分ぐらいしか時間がかからなかった。PCR検査より精度が落ちるとのことであるが、精度よりもスピードが大切、第一次検査を「抗原検査」で行い陽性者をより精密な「PCR検査」と組み合わせれば、未発症感染者を探す時間のかかるPCR検査の対象者がぐ~んと百分の一以下に減り、「一日百万人」の検査体制は可能であろう。

一日百万回の陽性検査ができれば東京都で半月に全員、首都圏でも1~1.5カ月で全員の陽性検査ができる勘定である。徹底した陽性検査ができ、早期発見ができれば、重症化する割合はさらに減り、医療崩壊の危険もなかったであろう。

費用対効果の根拠を知りたい

今年の4月号にも書いたが、PCR検査についての西村経済産業相の「費用対効果」発言にはびっくりしたものである。政府ができる「命にかかわる唯一のコロナ撲滅対策」を「費用対効果」で実施しなかったとのことである。

しかし、ワクチン接種に関しては菅首相のリーダーシップよろしきを得て、大号令のもと「大規模接種会場」の設営や、「一日百万回」作戦が始動し、大企業を先導とした「職域接種」、学生、生徒に対する「夏休み集中接種」など、次々にワクチン接種のスピード化を図っていることは、国民にとっても頼もしい限りである。

ワクチン接種でこのようにできたのに、全国の学校を一斉休校させてまで実施した第1回緊急事態宣言であるのに、なぜその期間中にコロナ撲滅作戦を採用しなかったのか。

「費用対効果」発言があったが、「一日百万回」作戦の費用と対比してみて、どのような根拠によるものか、知りたいものである。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三



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