気づけば自転車操業国家

このタイトルは日経ヴェリタス(3/7)に掲載された土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授の寄稿記事のタイトルです。要約は次の4つです。

①わが国の近年の国債発行では、2年以下の満期の国債が過半を占める。

②短期債に依存せざるを得ない状況にまで、我が国の財政は追い詰められている。

③こうした運営では、突発的な金利上昇で利払いが急増する脆弱さを抱える。

④コロナ対策なら国債増発をいとわないとの姿勢は、リスクが一段と高まっている。

〈カッコ〉内のタイトル及び太字はわたくしが付けました。

氏の記事を抜粋紹介します。

〈21年度国債発行の現状〉

21年度当初予算案に合わせて策定された国債発行計画では、借換債と新発債をあわせて236.0兆円の国債発行を予定し、そのうち210.0兆円を、事前に満期(借入期間)を決めて市中発行する(…略…)こととした。

その210.0兆円のうち、最も短い6カ月満期の国債を41.2兆円、1年満期の国債を42.0兆円、2年満期の国債を36.0兆円発行することとした。2年以下の満期の国債を119.2兆円、全体の56.8%も発行するという計画となっている。つまり、2年以下の満期の国債が過半を占めたのである。

そして、合計119.2兆円という金額は、20年度当初予算時の国債発行計画で事前に満期を決めて市中発行する国債の合計額(117.4兆円)よりも多い。

〈短期国債発行の現状〉

こんな国債の満期構成は、いつから始まったのか。それは、20年度の3次にわたる補正予算における国債発行である。20年度の補正予算で、事前に満期を決めて市中発行する国債を83.5兆円追加発行することとし、そのうち6カ月満期の国債が45.6兆円、1年満期の国債が15.3兆円、2年満期の国債が9.0兆円を占めた。約13兆円も費やした1人一律10万円の特別定額給付金や、約5兆円を費やした持続化給付金を含む新型コロナ対策の財政出動のために追加増発した国債(前掲の発行額)の83.7%は、2年以下の満期の国債だったのである。

〈短期国債に集中するリスク〉

2年以下の満期の国債にこれほど依存する財政運営となれば、突発的な金利上昇に直面すれば、たちまち利払費の急増に直面する。これまでは、国債残高が累増していたけれども国債金利がほぼゼロだったため、利払費は8兆円前後で収まってきた。しかし、金利上昇リスクが利払費に与える影響は大きくなっている。財務省「令和3年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」によると、金利が想定(1.2~1.3%)よりも1%㌽上昇すると、上昇した初年度に0.8兆円、2年度目に2.0兆円、3年度目に3.8兆円増加する、と試算されている。想定より1%ポイント上昇するだけで、3年経つと利払費が約1.5倍になるというのが、わが国の財政が置かれた現状である。

〈自転車操業への道〉

21年度の国債発行計画では、10年債(物価連動債を含む)を32兆円、超長期国債を28.8兆円と、例年より多い発行額としている。それでも、前述の通り、2年以下の満期の国債が過半を占める構成にせざるを得ないのが現状である。10年以上の満期の国債を発行できたとしても約60兆円で、それを倍増できたとしても、引き続き満期の短い国債を大量発行しなければならない状況は変わらず、数年では改められないところまでわが国の財政は追い詰められている。

「新型コロナ対策のためなら国債増発をいとわない」という姿勢がますますリスキーになっていることを、政府はしっかり認識しなければならない。

〈費用対効果?〉

コロナによって日本の財政状況のフェーズが変わったことをはっきりと認識させられた一文である。

コロナウイルス対策の基本は、「未発症感染者」を徹底的に見つけ、早期に隔離することである。

この対策を「費用対効果」で〝割に合わない〟として切り捨て、ただひたすら国民に「目に見えないウイルスから逃げよ」と国民に行動抑制を呼び掛ける政府、専門家の発想は、国民に閉塞感を生じさせ、経済活動を委縮させるのみで、これからさらに第4次感染拡大、変異型のウイルスの感染爆発を起こす恐れさえある。

コロナ対策も国民に対する補償政策に終始し補償額も逐次的に増加する傾向にあり、かつて、第二次大戦で兵力の逐次投入により多数の餓死者を出した「インパール作戦」や「ガダルカナル作戦」を思い出させる。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三
 

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