民法改正<相続関係>

2018年3月13日、遺産相続などに関する民法改正案が閣議決定されました。成立すれば、相続分野としては、1980年の改正以来約40年ぶりの見直しとなります。

今回は、この改正案の中の「配偶者の居住権を保護するための方策」について、概要をご紹介します(平成30年6月20日時点)。

Ⅰ.配偶者居住権の新設

「配偶者居住権」とは、簡単に言えば、配偶者が相続開始の時に住んでいた自宅に、そのまま住み続けることを認める権利です。
この権利の新設によって、次のような遺産の分割が可能になります。

【夫が亡くなり、妻と子ども1人が法定相続分通り(1/2ずつ)遺産を分割するケース】

(現在の制度)
相続財産
・自宅(評価額)5,500万円
・預貯金6,500万円

相続後
・配偶者の相続分 自宅(評価額) 5,500万円 預貯金 500万円
・子の相続分 預貯金 6,000万円
※今後の生活費としては心もとないですね

(民法改正案)
相続財産
・自宅(評価額)5,500万円
→自宅(配偶者居住権)2,000万円
→自宅(所有権)3,500万円
・預貯金 6,500万円

相続後
・配偶者の相続分 自宅(配偶者居住権) 2,000万円 預貯金 4,000万円
・子の相続分 自宅(所有権) 3,500万円 預貯金 2,500万円
※自宅に住み続けながら預貯金も相続出来ます

自宅そのものではなく、居住権を取得することで、自宅に住み続けながら、これからの生活資金を確保することが可能になります。

※この権利の具体的な評価方法については、まだ決定しておらず、「建物自体の価額」「敷地利用権の価額」に分けて、検討が進んでいます。

※建物については固定資産税評価額を用いた方法、敷地については借地権の考え方を取り入れた方法などが、候補として挙げられています。

Ⅱ.配偶者短期居住権の保護

配偶者が被相続人の所有する建物に、相続開始の時に無償で住んでいる場合

⇒その建物(居住建物)について、配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をする場合の取扱いが、新たに設けられました。

配偶者は、下記の①、②のいずれか遅い日までの間、その居住建物を無償で使用する権利を有します。

①遺産の分割により、居住建物の取得者が確定した日
②相続開始の時から、6カ月を経過する日

遺言等で、配偶者以外の者が居住建物を相続する場合でも、配偶者は、相続開始から一定の期間については、居住建物に無償で住み続けられることが明確化されました。

Ⅲ.遺産分割の見直し(持ち戻し免除の意思表示の推定規定)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅を生前に贈与したり、遺言で贈与の意思を示した場合には、自宅は相続財産として扱わない(自宅(特別受益)の持ち戻しを免除する)とされました。

相続財産が「自宅と少額の預貯金」というような場合には、遺産分割でもめた結果、自宅を売って、その売却代金を相続人で分けるというケースも見受けられます。今回の改正で、自宅を除外することが可能になり、そのような事態が避けられると考えられます。

今回ご紹介した民法改正案は、国会で成立すれば早ければ31年からの施行が予定されています。

遺産分割のトラブルは近年増加し続けており、平成28年度の家庭裁判所の調停、審判の件数は12,188件にのぼっています。

法律の改正等によって、より踏み込んだ対策を立てることが、これからも一層求められると思われます。

 

 


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