外貨建て保険

クローバー通信 No.131

「一時払い終身保険」は、保険会社だけでなく銀行窓口でも販売され相続対策としても人気がある商品ですが、日銀のマイナス金利導入の影響で、販売停止や保険料を上げる動きが出ています。

今後代替商品として、外貨建ての「一時払い終身保険」を提案されるケースが増えてくると予想されます。今回は「外貨建て保険」の特徴とリスクについてお話しします。

はじめに

生命保険会社の一時払い保険において、販売停止や保険料を上げるケースが増えている背景には、契約者から預かった保険料を長期間にわたり国債などで運用するため、日銀のマイナス金利導入よる利回り低下の影響を受けている事があげられます。反対に、日本での運用が難しくなった資金を外貨で運用する動きが強くなっています。

1 外貨建て保険の特徴

外貨建て保険とは、保険料及び保険金や年金、解約返戻金の支払いが外貨建てで行われる保険商品のことです。個人年金保険、終身保険、養老保険が販売されていますが、基本的な仕組みは円建ての商品と同じです。(4参照)

2 外貨建て保険のメリット

206_14P_保険2♥ 高い予定利率

外貨建て保険の魅力の一つは高い予定利率です。
米ドル建て[1.5~2.5%程度]・豪ドル建て[2.5~3.5%程度]のように、円建てに対し高い利率となっています。

♥ インフレリスクへの対策

今年2月頃より急激な円高となっていますが、エネルギーや生活必需品を輸入に頼っている日本では、将来的な円安による価格高騰(インフレリスク)の可能性があります。外貨資産を持つ事により、リスクの分散を図ることができます。

3 外貨建て保険のデメリット

♠ 為替リスク

保険料や保険金の入出金を円で行う場合、円建てでの受取額や運用損益が為替レートに左右されます。保険料支払い時より円安になれば有利になりますが、円高になると元本割れの危険性もあります。

♠ 投資リスク

運用対象となっている資産(債券など)の価値を解約返戻金に反映させる仕組みになっている場合、市場環境の変化により、解約返戻金が一時払い保険料を下回ることがあります。

206_14P_保険3 手数料が高い

仕組みが複雑な分、手数料は総じて高くなっています。

〔契約時にかかる費用〕

⃝保険運営などの為の費用(契約時費用)

206_14P_保険4〔運用コスト〕

⃝資産運用をするための費用(運営費率)
⃝最低保証のための費用(保証費率)
〔保険期間中にかかる費用〕
⃝積立金から死亡・高度障害保障のための費用(運営管理費率)

〔為替手数料〕

⃝契約時、円から外貨へ両替する為の手数料
⃝満期または解約時、外貨から円へ両替する為の手数料

♠ 元本割れリスク

短期間で解約すると、ペナルティがかかったり、払込保険料よりも解約返戻金が少なく元本割れしてしまう可能性があります。

4 円建て・外貨建て共通 一時払い終身保険の特徴

206_15P_保険5「一時払い終身保険」は『保険料の全額を最初に払い込む一生涯保障の貯蓄性の高い保険』です。0歳から85歳頃(各商品によって異なる)まで加入でき、解約返戻金が早い段階で払込保険料を超えて増えていくため、老後資金や学資保険など様々な使途に使えます。但し円建てに関しては、低い予定利率または取扱停止となり、保険会社・契約者ともメリットが少なくなっています。

相続税対策としては

① 納税資金の準備:受取人を指定でき、早く資金化できます。
② 財産評価の引き下げ:「500万円×法定相続人数」非課税枠 の活用により相続税の税率を減らす事ができます。
③ 節税:生命保険にかかる費用は税法上一定額の税金が控除されます。(下図参照)

外貨建て保険

まとめ

外貨建て保険は保険と外貨建て金融商品を併せ持つ商品です。契約者は保険と外貨のリスクを背負いますが、保険会社にとっては保険と外貨の二重に手数料が入るうまみの多い金融商品といえます。また、為替リスクがあるにもかかわらず円での最低保証分を確保するための費用もかかる場合もあります。

金融商品としてみた場合には、保険は掛け捨てで必要な額だけ日本円でカバーし、外貨預金や外貨MMFなど個別に投資する方法もあります。保険とセットでなければ、外貨建て金融商品が不利な状況になったらすぐに売却することもできるでしょう。為替の影響を非常に大きく受けるので、為替変動による受取額の変化を把握し、損益分岐点の試算を行っておく必要があります。何より、為替の方向性を確認し、現時点より円安方向に向かうとの判断が必要です。

保険の契約期間は長期にわたる上、為替の見極めは難しいので、セールストークを鵜呑みにせず、商品内容とリスクをよく理解した上で余裕資金で活用しましょう。

 

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