一億総活躍社会

196_会長2_opt「新三本の矢」

第三次安倍内閣は「新三本の矢」の目玉政策として「一億総活躍社会」の実現を掲げ内閣では担当大臣を任命し、党内では「一億総活躍推進本部」を設けた。今一番大事なこととして、国民共通の目標を作り、それに向かって頑張る体制を作ることだという。「新三本の矢」のうち「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」など社会保障分野を先行議論することとなった。

私としては第一次安倍政権の三本の矢の第三の「持続性ある成長戦略」がまだまだ姿を見せていないと受け止めている。農協改革、先端医療などいろいろな特区構想やTPP大筋合意を受けて改革が始まるにしても、発効までは早くても2年以上はかかるという話である。

一億総活躍社会も大切だとは思うが、成長戦略の実現に集中的に取り組んでほしいところである。

働かないアリに意義がある

アリとキリギリスで有名な働き者のアリの社会を観察した『働かない蟻に意義がある』(長谷川英裕著)がある。氏によるとあの働き者のアリの社会でも、本の帯に書かれているところによると「7割は休んでいて、1割は一生働かない」とある。

また別のNHKのドキュメンタリーで同じようなことが報道されていた記憶がある。天変地異が起きても種の保存・維持を図るにはそのくらいの余裕が必要なのであろう。

「みんなが疲れると社会は続かな い」という。本から引用すると、〝誰もが必ず疲れる以上、働かないものを常に含む非効率的なシステムでこそ、長期的な存続が可能になり、  長い時間を通してみたらそういうシステムが選ばれていた、という事になります。働かない働きアリは、怠けてコロニーの効率を下げる存在ではなく、それがないとコロニーが存続できない、極めて重要な存在だと言えるのです。〟

〝重要なのは、ここでいう働かな いアリとは、「働きたいのに働けない」存在であるということです。本当は有能なのに先を越されてしまうために活躍できない、そんな不器用な人間が世界消滅の危機を救うー
私たちはこれが「働かない働きアリ」が存在する理由だと考えています。働かないのにも、存在意義はちゃんとあるのです。〟

〝翻ってヒトの社会はどうでしょ うか。企業
は能力の高い人を求め、効率のよさを追求しています。勝ち組と負け組という言葉が定着し、みな勝ち組になろうと必死です。しかし、世の中にいる人間の平均的能力というものはいつの時代もあまり変わらないのではないでしょうか。それでも組織のために最大限の能力を出せ!と尻を叩かれ続けているわけです。昨今の経済におけるグローバリズムの進行がその傾向に拍車をかけています。〟

一億総活躍社会は蟻の世界から見るとどう見えるのだろうか。一億総活躍社会の方向性がまだまだ見えてこないのである。

高齢化社会から長寿社会へ

いつも言うように、長寿社会は人類が追い求
めてきた夢の、理想の社会である。それがまさに実現しようとしている社会が今の日本の社会であり、世に長寿国といわれる国々である。

高齢化社会の到来によってもたらされたいろいろな歪みを解消してバランスのとれた長寿社会へ変換していくことが求められている。

一億総活躍社会とはどんな社会を想定しているのだろうか。国民全員を働きアリにするのではなくそれぞれの世代に合った、それぞれの能力を十分発揮できる、子供には子供らしく、高齢者には高齢者にしかできない役割、働きができるような長寿社会づくりを願いたいものである。長寿社会であれば子育て世代は出産年齢にある 20 〜 30 代の若い人たちが 子育てがしやすい緩やかな社会が望ましい。

かつて、ヒトラーは結婚を奨励し結婚する人たちに家を取得する資金を貸与し、子供が一人生まれるごとに貸与額の四分の一の返済を免除する政策をとり出生率も上がり成功したという。「出生率1・8」を掲げる「新三本の矢」では検討に値する政策かもしれない。

子育てにしても、年老いて終末期にしても経済活動からはずれた非経済的な活動であり、金銭では測れないものである。このような意味で長寿社会は二重構造社会でなければならないと思う。ゆったり時間の流れる社会とコンピュータに象徴される超高速の時間が流れる社会である。グローバル経済とその周縁に繋がるローカル経済との二重構造社会が望ましいのではなかろうか。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

 


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