ふるさと納税返礼合戦

ふるさと納税

「ふるさと納税返礼合戦」というタイトルは最近の新聞の記事のタイトルである。

また、書店へ行くと「ふるさと納税」に関する本 がたくさん出版されている。また、つい最近、私の関係する団体から「ふるさと納税制度」を使っ た社会貢献しませんかと いう案内が来ていた。

それは国際的に活躍するリーダーを養成するた めに世界各国から学生を 募集して教育する私立の 学校の運営資金を、その所在地の自治体に「ふる さと納税」すると、その95 %が納税した翌年に学校の運営資金として助成 されるという仕組みになっているので、その自治体にふるさと納税して くれませんかというものであった。

これはいま流行している「ふるさと納税」した 地方自治体の名産品など、その地方の物産をふるさと納税のお礼として納税者へ送られてくるお金の使い方よりも一段と進化した形になっている。

本質を取り違えるな

しかし、特産品の返礼 もその地方の特産品を買い上げるということで経済活性化には一役買うこ とには違いない。

学校運営費の寄付も地方を活性化する意味では 効果がないとは言えないが、「ふるさと納税」が 提唱された本来の趣旨と は違うと思うのである。

平成 19年に出された 「ふるさと納税研究会報告書」によれば、「ふるさと納税」の意義を三つあげている。

第一は納税者の納税先の選択権である。第二はふるさとの大切さである。第三は自治意識の進化である。いまの返礼合戦にあるように、地方に注目する役割は評価するにしても、「返礼合戦」は本 来の「ふるさと納税制度」 を矮小化してしまう危険がある。

しかし、私は「ふるさ と納税」という考えの中に日本をグローバル社会へ導くすばらしいヒントが隠されていると考えて いる。

日本再生の切り札

ふるさと納税は日本再 生の切り札である。

地方には「仕事がない」 「お金(財源)がない」 とよく言われる。

地方には都市と同じよ うな仕事がないからこそ地方なのであって、地方 には都会にはない地方の良さがある。地方に仕事がなくても、財源がなく ても、地方にお金が回る 仕組みづくりを作ればよ いと思っている。

これに関連して思い出すのはベトナム戦争後、戦禍を逃れてアメリカや外国に逃れた人々が外国 からベトナムへ送金し、 ベトナムは送金経済で成り立っているといわれた ことがある。

「ふるさと納税」はふるさとを巣立って都会や世界に出て活躍している人々がふるさとへ「税」 という形で送金する仕組 みにすればよい。送金された「税」でふるさとの自然や景観や風習を大切に守る〝しごと〞ができるし、「税」とい う絆を通じて交流を深め「ふるさと」を活性化することができる。

「税は社会を変える」

アメリカではアメリカ 市民権を持つすべての人々は世界中どこに住もうとアメリカへ納税する仕組みになっている。私は日本の税制もこのように①現在の居住地主義から国籍主義にすること、 ②所得税中心主義にする こと、によって新しいふるさとの概念の拡張が行 われると思っている。

私はこれを「新ふるさ と納税制度」として以前にもこの欄で触れてきた。

翻って国内では国の課税権に対応するように国民に「納税選択権」を創設することとしたらよいと思う。こうすることによって、地方から都会へ 出てきた人は、自分のふるさとへも納税できる。 また、日本から世界に出て活躍する人たちは、日本へ納税することによっ て、日本という「ふるさと」 へ、さらに日本の中の「ふるさと」へ納税することができるようになる。

「税は社会を変える」 という。「新ふるさと納税制度」で、里山に代表されるように手入れの行き届いた豊かな自然と共生でき、開かれた地方の再生・活性化を願うものである。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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