個人保証が要らない制度を考える

WEDGEの記事から

WEDGE2月号に、「倒産からの復活」として政府の「再チャレンジ 懇談会」に出席した横田 信一郎氏の話が次のように出ていた。

「横田氏は、安倍首相の前で中小企業相談の充実と連帯保証制度の大変さを訴えた」(p. 37 )。
一度債務不履行や倒産 し返済が滞り、金融機関から保証人が債務を弁済すると、再度新しい事業にチャレンジすることは難しい。横田氏も述べていたように一度倒産してしまうと「金融機関からは融資を受けることができない。再建資金がないので、クラウド・ファイナンスを利用しようと考えています」と語っていた。

企業生存率という数字がある。起業して何年その企業が続いているか、5年で 20 %、10 年で5%という。5年で 80 %、10 年で 95 %の企業が廃業し消滅しているというので ある。

企業のスタートアップがいかに厳しいものであるか、他人の資産を預かる金融機関が連帯保証人を求める理由も理解できるのである。

スタートアップ・ ファイナンス

事業を起業するには支出が先行するので当然のこととして事業資金が必要になる。このスタートアップ時からの事業資金の調達を段階別にみると

①自己資金
②家族・親類・友人
③エンジェルと言われる人たち(*)
④ベンチャー・ファイナンス(**)
⑤金融機関からの融資

の順となる。

エンジェルと言われる人たちや、ベンチャー・ キャピタルはプロの投資 家である。彼らは起業された事業の中からさらに数パーセントの成長性の高い事業を選別しリスクを取って投資する。残った90 数パーセントの企業生存率の低い企業は①② の資金供給者や⑤金融機関に頼らざるを得ない。

漸く最近クラウド・マッチングやビジネス・ファウンディグなどが出てきているがまだまだ一般的になっているとは言えない。

成長戦略の中心は創業を促進すること

アベノミクスの成長戦略は長寿化により減少する労働力を創出するために雇用の流動化や女性労働力の活用のための政策を打ち出しているが、雇用する企業をどう創出するかの方がもっと先行 されるべき事柄である。

この観点からみると冒頭の横田氏の話にもあるように創業時の資金調達をしやすくすることが非常に重要なファクターと なっている。家族・親類・友人からの資金は資金援助をした場合であっても 廃業や倒産などによる未回収資金の損失は税制上何ら考慮されていないのである。

このため再チャレンジスタートにおいては、改めて資金調達することは極めて難しい。起業をしやすくさせるには、この起業の生存率がきわめて低い時期におけるスタートアップの原初の資金調達をしやすくするようにもっと考慮する必要がある。

個人保証を無くすには

「借入は利益の先取り」と私は思っている。借入の返済は利益の中から返済するのであって、創業時のビジネスモデルが確立しないうちに借入することは創業を極めて不安定にする。

しかし、多くの事業は創業時から金融機関から何らかの借り入れに頼っているのが現実である。ここに事業の生存率の低さがあるように思えてならない。廃業率の高い創業時の事業に対して金融機関は保証人を求めることがやむを得ないこととすれば、保証人の要らない、かつ、創業時に緩やかな資金を援助しやすいようにするには税制上自己資金や家族・親族・友人が援助する資金に対して次のような施策が必要だと思うのである。

1

創業時に使った自己資金は、再チャレンジしたときに、再チャレンジ事業の利益から控除し回収できるようにする。

2

親戚・友人が資金援助した金額は回収不能と なったときには他の所得と通算できるようにし資金の一部でも資金回収ができるようにする。

(*)自己資金による企業支援

(**) 他人の資金を集めて 事業資金を支援

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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