ミニ景気指標から

アベノミクスが提唱されて1年が過ぎた。今年はいろいろな方からよく聞かれたものだ。「景気はどうですか?」と。こ う聞かれてもなかなか答えようがないのが実感だ。

自由民主党政権ができてから株価は1万5千円を回復し、ほっとした空気が流れていることは、民主党が政権を取っていたときの閉塞感から比べれば雲泥の差がある。

しかし、足元のお客さまの状況を見ると元気なお客さまもあるが、全般的には全く低迷していると言わざるを得ない状況である。

私たちはお客さまの決算が終わると、このコラムの下欄にあるように「LRグループ○月提出法人決算概況」を掲載している。

項目は①売上高②粗利益③純利益④総資産⑤自己資本の五項目について増減した会社数の割合を表にし、時系列のグラフにして変化の状況が見られるように掲載している。

よくお客さまから「景気はどうですか?」と聞かれることがあるので、このグラフを見ていただいて、私どもの体感景気をお話しすることにしている。今月は8月決算期法人で 10月に法人税申告書を提出した法人の状況が最新である。

この意味で約4カ月のタイムラグがあるのではないかと思う。8月が決算期であるから安倍政権が誕生して8カ月が決算に織り込まれていることになる。この表を見て分かるように売上高、粗利益が前年より良くなったお客さまの割合は年初以来ずっと 30%台が続いていて、やや右肩下がりの傾向にあることがわかる。

新聞報道などによると大企業には回復基調の報道が多いが、私たちの周辺の中小・零細企業ではアベノミクスの恩恵はまだまだ遠いところにあるように感じている。

賃金は上げられるか

安倍首相は賃金アップを経済界に求めている。高度成長期は終戦直後の復興から賃金労働者の急増により中間層が形成され、三種の神器に代表される消費需要が爆発的に発生し、消費財の生産も盛んになり好循環の高度成長が達成された。だから、賃金を上げて消費需要を増やそうというのであろう。

しかし、産業の空洞化によって賃金労働者の減少が進み、併せて少子高齢化現象によって消費需要は沈滞して、デフレスパイラルに入っているのが現状である。

10 月 24 日付の新聞によれば中小企業の労働生産性(※1)は482万円(大企業1,406万円の34 %)、労働分配率(※2)は73 %(大企業は 50 %) と報道されていた。

アベノミクスでは成長戦略の最優先事項として賃金の増額を経営者に求めているが、労働生産性の低さ、労働分配率の高さから中小・零細企業にとっては無理難題である。

労働分配率が 73 %では給料を払うのが精一杯で中小・零細企業は設備投資、市場開発、研究開発にお金を使う余裕は望むべくもない。労働分配率を下げられなければ自然消滅を待つばかりである。

仮に 60%まで引き下げるとすると賃金はさらに18 %〜 20 %引き下げなければならず、現在の352万円から289万円に下げなければならない。

ものすごい賃金の引き下げ圧力にさらされているのである。

消費税増税は中小・零細企業を直撃

安倍首相は 10月に来年4月からの消費税増税を決定した。
大企業は円安効果も あって業績回復が報じられているが、中小・零細企業には円安はコストアップにつながり業績回復にはほど遠いことは先に述べたとおりである。

消費税増税が始まるまであと3カ月があるがそれまでに明るさが中小企業に及ぶことは期待できない。このようななかで消費税増税は中小企業の資金繰りを苦しくさせ、安倍政権が目指す賃金アップどころか、さらに人件費抑制に働くことになる。

こう見てくると来年4月から始まる消費税増税は真正面から中小・零細企業を直撃することになるのではなかろうか。

(※1)労働生産性

一人あたりの付加価値、粗利益

(※2)労働分配率

粗利益に対する人件費の割合

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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