不動産鑑定評価のポイント

第288回 財産承継研究会

不動産鑑定評価のポイント

株式会社東京アプレイザル
代表取締役・不動産鑑定士 芳賀 則人 氏

相続税申告時の時価評価

財産の評価

財産の評価は、相続税法第22条において「当該資産の取得の時における時価による」とされています。しかし、国税庁では同条の時価の解釈及び評価の画一性・迅速性・簡便性のため財産評価基本通達を制定し、「財産評価基本通達によって評価したものが時価である」としました。

相続税評価について

平成4年3月に国税庁は国税局に次の事務連絡をしています。

○路線価等に基づく評価額が、その土地の課税時期の「時価」を上回ることについて、申告や更正の請求の相談があった場合、路線価等に基づく評価額での申告等でなければ受け付けないなどという事のないように留意する。

○路線価等を下回る価額で、申告や更正の請求があった場合には、相続税法上の「時価」として適切であるか否かについて適正な判断を行うこと。

○具体的には、各種地価動向調査等による当該土地周辺の地価動向を把握し、例えば、当該土地が売却され、その売買価額を根拠として申告等がなされた場合には、他の売買事例との比較から当該土地の売買が適正な価格での取引といえるかどうか判断する。あるいは精通者への意見聴取を行うなどして、当該土地の課税時期における時価の把握を行う事とする。

つまり、財産評価基本通達に基づく路線価評価で算定した価格が適正な価格を大幅に超える高い評価額となる場合には、必ずしも路線価評価による金額で申告しなくてもよく、不動産鑑定評価等による価格でも構わないということです。

例えば、路線価評価額が1億円、鑑定評価額が5千万円となった場合は、鑑定評価額の5千万円で申告しても良いのです。ただし、税務調査により否認されることもあるので、鑑定評価を使うときは、そちらの可能性も頭に入れておかなければなりません。

相続税の申告で路線価評価より鑑定評価の方が有利(評価額が低くなる)になる可能性のある土地の具体例

○無道路地
○間口狭小地
○崖地
○傾斜地
○段差のある土地
○著しい不整形地
○変形地
○山林
○市街化調整区域内
○別荘地 等

土地の価値の源泉は、その土地にどのような建物が建てられるかです。つまり、法的に、あるいは物理的に建物が建てられない土地は大きな減価が発生すると考えられます。尚、公的な土地評価基準(路線価等)は建物が建てられない土地を想定していないため、その評価にあたっては極めて不当に高額になる恐れがあります。よって、これらの建築不可の土地は個別的に、その評価額を検討してく必要があります。

広大地の基礎

広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの、但し、大規模工場用地に該当するもの(工業専用地域内の土地)と中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(マンション適地)を除くとされています。(財産評価基本通達24ー4)

したがって、「広大地」とは、経済的に最も合理的(最有効活用)であると認められる開発行為が、「戸建分譲用地」と判定され、かつ、経済的に最も合理的に戸建住宅の分譲を行った場合に、「潰れ地(開発道路等)」が必要な土地をいいます。

ここで、最有効使用とは、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(「不動産鑑定評価基準」)をいいます。不動産の価格は、この最有効使用を前提として把握される価格を基準として形成されます。広大地の評価を適用した場合、路線価評価と比較して、1000㎡の土地で45%の評価減、5000㎡の土地で65%の評価減が行われます。

原則である路線価評価に加えて鑑定評価や広大地の適用で適正な相続税評価を行うことで過大な納税を避け、適正な納税をしていきましょう。

 

♥ 次回の財産承継研究会の開催日 ♥

2012年11月16日(金) 18時30分~20時30分

☎044-811-1211(石井・駒まで)

お申し込みは こちら

 


神奈川県川崎市で税理士・社会保険労務士をお探しなら

LR小川会計グループ

経営者のパートナーとして中小企業の皆さまをサポートします


お問い合わせ