「“出稼ぎ”のススメ」

いつまで続く「円高」

日経ビジネスの 2011・9・5号で「出稼 ぎのススメ」が特集されていた(写真) 。国内が 20年におよぶデフレで停滞する国内景気、その上に3・11東日本大震災後、超円高で企業の海外移転が加速し悲鳴に近い声が上がっている。

特集は、この円高を逆手に取った逆転の発想を提案している。成長市場は完全に新興国に移った今、経済水準の違う新興国と競うには、現地で作ることが求められる。

ただ、国内拠点を残しながら海外進出を図り、海外の利益を日本国内に還元する『出稼ぎ』精神に裏打ちされた積極的な行動が求められる。

中小企業も出稼ぎに出よう

中小企業が海外へ進出するといっても、なかなか困難であることは何十年もの歴史の中で明らかではあるが、海外諸国、 特に東南アジア諸国の環境が変わってきたのは中国がテイクオフしたこの10年ほどのことである。中国がテイクオフしたことで、フェイズが変わったのである。

今度こそ中小企業でも独自で海外進出を真剣に考えなければならない時がきた。海外市場は国内市場とはまったく異なる。これまでは日本市場のための海外進出だったが、これからは海外市場向けのための海外進出に変わったのである。

何が違うか。量が違う。日本国内では10個、100個の世界が海外では10万個、100万個になり、よほどの覚悟がなければ量に押しつぶされてしまうが、逆にチャンスも多くなる。

中小企業は独自で進出するにはハードルが高いが、5~10年の計画を立てて取り組んではどうであろう。幸い現在では外国人技能実習生という制度がある。海外進出したい中小企業は国内基盤を確立させ、進出したい国から研修生を受け入れて、海外進出の足がかりとするようにこの制度を利用することを積極的に考えたらどうであろうか。

シンガポール・ネットワーク構築のすすめ

出稼ぎ先はどこか?今はベトナムやカンボジア、ラオスが出稼ぎ先のスポットライトを浴びている。しかし、東南アジア(アセアン諸国)には他にも日本企業が進出している沢山の国々があり、中国を取り巻き、包み込むようなロケーションにある。

だが、アセアン諸国と一口に言っても宗教、言語、風習など多様性に富んでいて、これらの多様な国々を個別的に対応することは日本人としてはなかなか難しい。

しかし、よく観察するとシンガポールは言語が世界共通語である英語で、オーストラリア・ニュージーランド・フィリピンと共通である。インドネシアやマレーシアはイスラム圏、タイ・カンボジア・ベトナムは仏教圏、大国インドはヒンズー圏、遠くは中東ともつながっており、東南アジアにおける「ハブ機能」を持っている。

シンガポールは、日本から東南アジアに進出するに必要な情報・人材が豊富に揃っているところである。中小企業の海外進出を支援する国や地方公共団体、中小企業組織の人たちには、このシンガポールに『出稼ぎ』ネットワークの人材・情報の拠点(総司令部)を構築することをお勧めするものである。

お金も『出稼ぎ』させよう

シンガポールはいまギリシャを含むPIGS(南欧諸国)の債務問題でゆれているヨーロッパに変わる金融センターとしても脚光を浴びてきている。

9月 01 日に日本FP学会のシンポジウムが開かれた。テーマの一つは「運用対象としての国債~国債は安全か~」というものである。報告者の一人からは、収益性を求めるお金は海外マーケットへ「お金も出稼ぎさせよう」と いう趣旨の報告があった。

ゼロ金利時代において運用収益を挙げるには資金需要の旺盛な海外のホットスポットで運用を目指すことは理にかなっている。いままさに『お金も出稼ぎさせよう』の時代になっているのである。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 

 


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