創業型社会 その2

日銀が成長促進へ向けて新規貸出制度

4月 30 日、「日本銀行は 政策委員会・金融政策決定会合で成長基盤の強化を促す新たな貸出制度の創設を決めた。」と新聞各紙が報じていた。終戦直後の傾斜生産方式ではないが、なけなしの資金を重点的に配分し基幹産業から立ち上げてきた戦後の産業政策の一端を思い出させる。

この政策に対しては、日銀の中立性や日銀が特定産業にコミットすることの危険性を指摘する声もある。しかし、私が求めている創業型社会の創出はそんな大げさなものではなく、いわ ゆる市民目線の「SOHO」や、ハイテクならぬローテクビジネスなどの草の根レベルでの創業社会を言っているのである。

身の周りにある小さな創業

見回してみると、私の周りにも小さな創業が沢山ある。つい最近でも、

①自然食品を意識したパンの製造販売
②デザイン力・アイデア力を生かしたアクセサ リーの製造販売
③高齢者、単身者を意識した完全予約制の定食屋
④うどん屋
⑤ 引きこもりから農業に飛び込んでいった若者

などがいる。

これらの創業の泣き所は資金のないところである。自分の貯金、自分一人の労力や家族の労力、少し忙しくなったところでパートの手伝い、で成長が止まってしまうことである。この先は、現在では資金を借り入れて事業の拡大を測るしかないのでハードルが高く成長が止まってしまうのである。

事業が安定し成長路線に入るまでのリスクマネーを集める手段は、現在の日本の社会ではない。創業型社会のアメリカでは、身の回りにある小さな創業時代は 家族ぐるみ、友人ぐるみの支援から始まる。このよう な小さな支援から、地域のパトロン的な出資者、エンゼルと言われる人々の支援が受けられて成長していく。創業型社会を創設するにはこれらの人々がお金を出しやすくすることである。

会社法の精神に逆行する 税制

創業するときの拠りどころとなる会社法は平成 17 年に商法から独立し、明治以来の多数株主大資本調達型会社から一人からでも会社 を造れる創業型会社法へ転換した。

創業から成長段階に応じて資本調達手段の多様化や会社統治組織、組織を再編し進化する企業組織に対応できるように改正したのである。

ところが、税制はこの会社法の精神に反して新会社法では小規模会社の乱立が予想されるとして、会社制度の乱用を阻止しようと小規模会社の課税強化を打ち出したのである。

前回も指摘したが、創業 から「生業(なりわい)」へ、さらに「家業」へ、もう一歩 「事業」への発展させていくには、「生業」段階における 「身の回りの小さなリスクマネー」の出し手を育てる方策が必要である。

税制は社会を変える

「税制は社会を変える」これは私の口癖である。逆に 「社会は新しい税制を求めている」ともいえよう。

創業型社会を創造するには、創業型社会に適合した 税制が必要である。何も特別のことをする必要はないが、課税の原則に戻って、会社への出資の損失を他の所得と通算できるようにすることである。

新規創業の90 %以上は5年以内の生存率といわれる非常にリスキーな創業時に資金を出せる家族ぐるみ、友人ぐるみであり、この身近な人びと が自立支援、創業支援の資金を出しやすい制度が必要である。

非正規社員が急増したり、求人倍率が低迷しているが、シャッター通りができて困っている人がいればそこにビジネスがあると考え、起業を考える人があっても良いと思うのは私ばかりではあるまい。

LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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