経営承継円滑化法と中小企業の事業承継

画期的な経営承継円滑化法

No122_1431444昨年 5 月経営承継円滑化法 (以下「円滑化法」と略称)が成立して、金融支援については 昨年 10 月から、遺留分に関する民法の特例については今年の3 月から施行され、さらに、円滑化法の中核である相続税と贈与税の納税猶予制度が予算関連法案として 3 月 27 日成立し、 3 月 31 日施行された。

これで円滑化法の全部が揃い、その全容が 4 月 1 日から動き出した。相続税の納税猶予制度は、昨年の 10 月 1 日以後に開始した相続に遡って適用される。

民法という市民生活の基本法を変更してまで中小企業の事業継続のために、しかも、後継者を相続人から親族にまで広げた特別法を制定したのだから、中小企業対策としては画期的な制度が出来たものだと思う。

円滑化法の概要

円滑化法は、

①遺留分に関する民法の特例
②金融支援措置
③相続税の納税猶予を求める付則

の三つからなってい る。

まず①遺留分に関する民法の特例では、事業資産の相続で従来問題とされていた「財産の持ち戻し制度」と「持ち戻し価格」について、推定相続人間の合意により「財産の持ち戻し制度」を排除したり、持ち戻し価格を贈与の時の価格とすることを取り決めることができるようになった。

また、②金融支援措置は相続人間の協議に当って後継者以外の相続人との権衡を図るため、金銭的な調整をする時や後継者が株式を買い取る時の資金が必要な場合には、金融支援を受けることが出来る。

③相続税等の納税猶予については、後継者等が非上場株式を贈与なり遺言なりで株式を取得した時は、議決権数の三分の二までについては、贈与を受けた時は贈与税の全額、相続の時はその価格の 80 %について相続税の納税を猶予され、最後は納税を免除することとした。

中小企業の事業承継に朗報

中小企業の事業を継承するものは誰か、調査によると(図参照)今まで子が後を継ぐのは20 年前は 80 %であったものが、現在では 40 %と半分になってしまっているのである。

また、他の親族が 14 %から20 %に増えている。他人が事業を継いでいるのが 40 %近くになっているのも、これからの事業承継を考える新しい視点を我々に与えてくれる。こうし た現状認識を踏まえて経営承継円滑化法ができたのである。

今回の円滑化法は後継者の範囲を推定相続人から「親族」 に拡げて 20 %の「他の親族」の事業承継に朗報をもたらした。

表に事業承継の 8 モデルを示す。今まではモデル 1 から3 までの推定相続人しか、株 式の相続ができなかったが、円滑化法によってモデル 4 か ら 6 の場合のように娘婿、兄弟姉妹、従兄弟、甥姪であっても親族内の適切なコンセンサスができれば、『相続人でなくても、養子縁組をしなくても』非上場株式の贈与や遺贈を受けて、一定の条件を満たせば贈与税は免除され、前経営者の相続のときに贈与を受けた非上場株式の価格の 80 %に相当する相続税が納税猶予されることになったのである。

これからの事業承継のあり方

事業承継をするには、①株式の承継②融資の担保能力③ 経営者としての能力が求められるが、今までの中小企業の事業承継では非上場の優良会社であればあるほど株価が高くなり、相続人以外に後継者になることが難しかった。

これからは、対象株式の価 格の 80 %に見合う相続税が免除されるので、会社の内容が良ければ良い程その効果が大きくなる。 今までは株式の評価が高いために相続対策として分散せざるを得なかったが、これからは、株式の保有を集中すればするほど良いこととなるのである。

前段でも触れたが、事業承継を子供達だけと限定することなく、兄弟・配偶者・甥姪と広い範囲で後継者の選択が出来る様になったので、100 年企業を目指して、親族間の融和とコンセンサスを図るこ とが一層重みを増すこととなってくる。 また、親族として保有株式の集中化が出来ると、表のモデル 7 の社員の登用やモデル 8の経営者のスカウトといった新しい事業承継モデルが育ってくると考えている。

一つのイメージを挙げるなら ば旧財閥の経営スタイルを思い浮かべることができる。新しい事業承継のあり方がスタートしたのである。

LRパートナーズ代表社員 小川   湧三

 


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