2008年は中小企業の事業承継元年

No111_1324254中小企業の事業承継ガイドライン

今年の3月確定申告の繁忙期が終わったあと、タイのバンコクで日本M&Aセンターが主催する事業承継国際会議があった。そこでの基調講演のテーマは標記の「2008年は中小企業の事業承継元年」であった。

事業承継は言われて久しいが、事業承継、特に中小企業の事業承継は内々のもの、マイナーなもののイメージが強かったように思う。それが、事業承継元年として取り上げられたことは、われわれ中小企業に携わる者にとっては大きなインパクトを受けたものである。

そもそも中小企業の事業承継がここまで取り上げられるようになったのは、05年の中小企業白書に取り上げられ、年間7万社が解散、約30万人が失業していると推計しており、中小企業庁がことの重要性を認識して、事業承継問題に関する研究会を立ち上げたところから始まる。

この研究成果として06年末に「事業承継ガイドライン・20問20答」を発表し、事業承継を従来は「親族内承継」を前提として語られていたものを、ハッキリと「従業員等への承継・外部からの雇い入れ」と「M&A」を事業承継のスキームとして明示したことにある。(図1)

2008年事業承継元年の所以

基調講演によれば、メガバンクがこの中小企業庁の動きを受けて07年から中小企業の事業承継に絡むMBOやM&Aをビジネスチャンスと見て約8千名―1万名の営業職員の営業体制を整え08年、すなわち今年から大営業攻勢をかけるべく活動を開始するとのことである。(図2)

いままでは中小企業の事業承継は全国でも約300の会計事務所、日本M&Aセンターなど極めて少数の者がビジネスとして関心を持って展開していたに過ぎない。これが「事業承継はタブー」から開放されて1万名規模の営業攻勢がかかるのである。かくして「2008年は中小企業の事業承継元年」といわれる所以である。

また、5月9日「中小企業経営承継円滑化法」が成立した。中小企業の事業承継がスムーズに行われるように民法の特例を設けた法律で、今までの中小企業対策とは一線を画す制度といってよく、この意味でも「事業承継元年」といえるものである。

中小企業の事業承継問題は構造的なもの

翻って私なりに事業承継問題を考えてみると、この問題は戦後の長寿化社会に伴う必然的な構造的なものと思うに至った。私自身すでに72歳になっても現に現役で仕事をしており、まだ自分なりにそう衰えているとも思えないのである。義父は62歳で亡くなり、その後を私は36歳で跡を継いだ。待ったなしである。必死で働いているうちに気がついてみたらこの歳になっていた。長寿化社会のなせる業である。

後継者問題は20数年も前から言われてはいたが、いざ、事業を継いでは見たものの、既に50代の半ば、60代になって経営への意欲もエネルギーも失くしてから継ぐ例も稀ではない。40代50代前半で形は後を継いでも、メドベージェフではないが後ろでプーチンに睨みを効かされては、腕を振るいたくても振るう場がでてこないように、そのうちに意欲が萎えてしまった例が如何に多いことか。

新たなチャンスの到来

後継者問題は構造的なものである以上、親族内後継者と目される人たちにはある意味では受難の時代でもあるが、見方を変えれば、新たに創業しようとする人たちにとっては大きなチャンスの時代でもある。

やる気と能力があれば経営者への道が開ける時代に入った。親族内経営者であっても、新たな創業者的意欲や能力があれば、ゼロからのスタートではなく、既存の蓄積の上からスタートすることができるのである。

また、現役の経営者にとっても視点を変えれば今までとは全く違った展開が想定できる。欧米では早くから言われていた「ハッピーリタイアメント」の道が開け始めたのである。事業承継問題は私たち中小企業に係わる者にとっては『偶然』の出来事であったが、これからは『必然』の課題として取り組むべきものになってきた。

お客さまのハッピーリタイアメントを助け、あるいは、事業後継者へのコミットメントをしっかりと行わなければならない、と覚悟を新たにしたのである。このような意味で私自身にとっても、今年は事業承継元年となった。

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