矮小化されてしまった「ふるさと納税」

税制改正のシーズン

No105_11125288年末が近づくと恒例の来年度の予算編成を目指して税制改正のシーズンが幕をあける。

今年の税制改正の議論はちょっと様子が異なる。安部政権の崩壊と共に改革優先のワクがはずれ、増税優先に完全にシフト してしまった。

福田首相は消費税の増税にはしないと言っているが、政府税制調査会の香坂会長は消費税の増税を税制調査会の答申に盛り込んだし、自民党は参議院選挙の敗北を受けて一斉に地方格差の解消を合言葉にバラマキ予算編成に向かっている。

中小企業の後継者対策として相続税における株式評価の 80 %圧縮が盛り込まれるなどわれわれとしては歓迎すべき改正も含まれているが、相続税の基礎控除を縮小する案など財政改革を優先する増税路線が顕著になってきた。

ふるさと納税

これら税制改正の議論の過程で本年6月号で述べた「ふるさと納税」についても、納税先選択指定から寄付金控除に矮小化されて方向が決まったようだ。残念である。

「ふるさと納税」がこのように矮小化されてしまった最大の理由には、地方税の課税の原則である「受益と負担」の原則に馴染まないのではないかということと、手続きが煩瑣になるのではないか、という反対派の危惧が根本にある。

しかし、ふるさと納税のアイデアはなぜ出てきたか、地方と首都圏の格差の拡大、小泉政権の改革路線の中で公共投資の圧縮で地方格差が拡大しているところから、地方へどう還元する、地方をどう活性化するかという議論の中から出てきているのである。

受益と負担を考える

はたして「ふるさと納税」は、受益と負担の原則になじまないのか。受益と負担と言っても、何も現在だけでマッチングを考える必要のないことは、道路を考えてみれば 分かりやすい。

道路行政は、何十年もの後年度負担を抱えた建設国債で賄われていることを見れば明らかなように、ふるさと納税は受益 と負担の原則に馴染まないとすることは明らかに現状と矛盾すると言わなければならない。

私は新潟県上越市の出身である。今でも時々故郷として帰ることがあるし、様々なつながりにより故郷の恩恵を受けている。人手不足のときは故郷の学校にお願いして職員の採用もしたこともある。

また、「終の棲家」をどこにするか、と問われれば究極の終の棲家として故郷を選ぶ人も多いのではなかろうか。昨日も某テレビ番組で韓国で生まれ、日本を知 らない子どもが第二次大戦の敗戦で韓国から引き上げるにあたって、本籍地である見知らぬ遠い故郷を目指して帰る決意を したシーンがあった。

ふるさとが荒廃するのを望んでいる地方出身者は一人としていないし、ふるさとが良くなることを望むのは当たり前のことである。何らかの貢献ができる道があれば協力を惜しまないと考えている人が私同様に大勢居るものと感じている。

ふるさと納税は地方活性化のカギ

No105_11131925ふるさとへの還元方法はいろいろあると思う。税収の格差を補う制度として地方交付税制度もある。 10 億円を現金で寄付する人も居る。ふるさとに住む老親への送金を扶養控除などとは違った視点で考慮することも考えられる。しかし、その中でもふるさと納税制度は地方活性化のきわめて有力な手段になるものと確信するものである。

すなわち、ふるさと納税制度は、寄付金とは異なり毎年やって来る税のシーズンになると、納税をするという行為の中で行うことになるので、全国各地から故郷を離れて働いている多くの地方出身者に「ふるさと」を意識させ、いろいろな思いを都会から出身地へ発信させる。ややもすれば沈滞化しがちなふるさとへ都会の活力を伝えることになる。

ふるさとにおいても我が地方の有力出身者と税を通じて新しい情報を入手するシステムができあがる。現在も多くの県人会や出身学校ごとの同窓会、同郷会などが行われているが、単なる交流会に止まらせず、ふるさと活性化の大きな力となるのではなかろうか。

国が提唱し推進している二地域居住制度とも関連し、ふるさとへの回帰をも側面から支援し、地方の活性化への強力な支援となるものと考えるが、皆さんはいかがお考えであろうか。

税理士法人LRパートナーズ  代表社員 小川湧三

 


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