ゼロ金利解除・金利について考える

ゼロ金利解除

7月14日日本銀行は無担保コール翌日物金利(短期金利)をゼロ%に押さえ込んできた「ゼロ金利政策」を解除し、政策的に誘導する無担保コール翌日物金利の目標をゼロ%から0.25%に引き上げ、あわせて公定歩合を0.1%から0.4%に引き上げた。

ゼロ金利政策は平成12年8月に一旦解除された後、翌平成13年3月の量的緩和政策の導入でゼロ%になって以来5年4カ月ぶりとなる。今年3月に量的緩和政策を解除してからゼロ金利政策解除の時期が何時になるか時間の問題とされていた。

専門家の間では景気・経済に対する見方により7月、9―10月、年末年始などが取り沙汰されていたが一番早い時期に解除されたことになる。

お金の常識を疑う

資本主義経済において金利は当たり前と考えているが、金利はマイナスでなければならないと考えた人たちもいる。

「私たちが生きている通常のお金のシステムでは、お金を貸し付けること、つまり保有を一時的に断念することに対して報酬を与えています。つまりプラスの利子が支払われるわけです。お金を借りた人は当然のように利息を支払います。誰もこれを疑いません。しかし本当にそれが当たり前なのでしょうか。」(NHK出版「エンデの遺言」p.105-106)

「第一次世界大戦後、シルビオ・ゲゼルという人物が“お金は老化しなければならない”、お金も経済プロセスの終わりにはなくなるべきであるといっています。ちょうど血液が骨髄でつくられ、循環して、その役目を果たしたあとに老化して排泄されるように。お金とは経済という、いわば有機的組織を循環する血液のようなものです。金は天下の回りもの、なのです。(要約)」

このマイナス金利の考えは第一次大戦後のオーストリアで実施され成功したが、政府の圧力で中止させられた。

お金を考える

No89_1625518お金は経済の血液だとよく言われるが、現代経済システムの中にその血液を滞留させる要因が仕組まれている。

お金にはいくつもの異なった機能が与えられ、第一にはお金にはモノや労働をやりとりする交換手段としての機能、第二にお金は、財産や資産の機能、このお金は貯め込まれ、流通しないお金で銀行や株式市場を通じてやりとりされる資本の機能も与えられている。

この第二の機能をもつお金が日々変動しながら世界を駆けめぐり、生活や生産の場を混乱させている。この本来絶え間なく循環しなければならないお金に、利子というインセンティブを与えて滞留させる、しかも指数的な複利と言う現代の経済システムは、お金に錬金術的な性格を与え、自然と環境を破壊し貧富の差を押し広げている。

安定したお金のシステムとは

この混乱を内包するシステムを安定したシステムに変えるために、お金の機能を交換だけに限ったお金のシステムを提案しています。

「まず、現在の段階的な利子の全体を、ゼロのレベルまで押し下げます。つまり長期の利子が0、あるいはプラスマイナス1になるようにして、現金、普通預金、短期の金利は上げるようにするのです。そうすれば長期で預金することはできますが、数の上での成長による上乗せはありませんから、安定したお金を作り出すことができます。(p.67)

ゼロ金利解除は正しかったか

金利システムの正常化の方向には二つあることになる。一つは今回のようにゼロ金利解除であり、もう一つはお金の機能を交換手段に限定する金融システム全般の見直しから、マイナス金利の導入である。

後日、お金を根源を考え、モラルや倫理的問題の存在を認め、金融システムを自然の摂理と調和させ人間の手に取り戻そうと歴史を振り返る時、ゼロ金利という願ってもない環境にあった日銀は大事な決断のチャンスを逃したといえるかもしれない。

(小川 湧三)

 


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