定年延長と雇用のあり方を考える

4月から定年が65歳になる

今月(4月)から「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」により定年年齢を60歳から65歳に延長することになった。

10名以上雇用するすべての事業所は労働協約や就業規則で定年を①65歳に改定するか②定年の規定を削除するか③60歳の定年のまま就業規則を改定せず、継続雇用する者の基準を定めるにより65歳までは雇用する義務が生ずる。

昭和36年(1961年)に国民年金制度が発足して40年経った2001年、漸く満額支給が受けられるようになった。と、思ったその年に年金財政破綻が大きく問題となり年金保険料の引き上げ、国民基礎年金の受給年齢を60歳から65歳への引き上げがきまり、60歳定年制とのギャップが生じて国民基礎年金の無受給期間が生じることになってしまった。

厚生労働省はその無受給期間を埋めるため企業に対し継続雇用促進事業を進め自主的に定年を延長する就業規則を改正するように進めてきた。この定年延長が法律の義務規定になったのである。

職業・仕事に対する意識の変化

戦後日本の繁栄と企業の成長を支えてきた終身雇用制度をベースとした年功序列、退職金制度などの雇用政策が崩壊し新しい雇用のあり方、働き方が変わって来ている。

職業・仕事に対する意識の変化には四つの大きな流れが見られる。

一つは、国民総中流化の豊かさの中で大学を卒業しても仕事に対する自覚、人生における目的などが不明確なまま卒業してしまい、就職してから自分の考えている理想と現実のギャップに戸惑い失望して転職していくものが多くなったことである。

二つ目は、不況期を境に長いデフレ不況期における一流企業の倒産や、倒産に至らないまでも大量解雇の発生、官僚への不信感などにより官庁・大企業依存神話が崩壊し、自分の身に能力を付けるキャリア志向が多くなり、キャリア形成のための積極的な転職を望む人たちが増加していることである。

三つ目は、一番目の転職型から一歩進んで正規に就職しない家計依存のフリーターや、特に1997年以後大企業による大量の早期退職組みの中にはSOHOスタイルの起業を試みている中高年齢者も沢山いる。

四つ目は、最近のIT企業の成功者たちやIPOによる資産形成を目の当たりにしてベンチャー企業を目指す若者たちが出てきていることである。

終身雇用制から有期雇用契約制へ

このような労働観、仕事に対する価値観、社会的環境や生活環境が大きく変化し多様化している。意欲ある人が能力に応じて働けるようにしたり、新しく社会に出る若者には、働きながら自分の生き方・働き方を見つけられるようにしたり、キャリアアップを目指して上昇志向の高い若者に対応できる雇用のあり方はどうあるべきであろうか。

また、65歳が定年だと言われても元気で働ける人、もろもろの事情で語らなければならない人も大勢いる。一方雇用する企業側にとっても流動性の高い労働力をどう企業に定着させるかが問われる。

能力、体力、ライフスタイルなどに応じて就業できるようにするには、定年という一本の線を引くのではなく、年齢に関係なく3年ないし10年を一期とする有期雇用契約制度を取る事が望ましいのではなかろうか。

有期雇用契約は企業側にもメリットが多い。有期雇用契約は期間満了による労働契約の解除を前提とするものではなく、更新を前提に企業と労働者が企業の求めるもの、労働者は自分の希望を十分に話し合う機会が生まれ、解雇等によるギクシャクした関係は減少し、しなやかで安定的な雇用の流動性も生まれるのではなかろうか。

いま、厚生労働省では新しい労働契約のあり方を中心とした労働契約法の制定を検討中という。早く実現を望むものである。

(小川 湧三)

 


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