地価「ゼロ」?への恐怖
地価ゼロというと奇妙に聞こえるかも知れない。かっては収益還元法はあっても日本の実情とは合わないもの考えられていた。しかし、収益還元法が定着すれば自分の土地がゼロになることもあり得る。
不動産流動化施策の発進
1997年の金融機関の倒産が相次いだあと、金融機関が抱える不良債権処理のため、あるいは新BIS基準対応などのため銀行自体や融資先の所有不動産の売却が相次いだ。その後も不良債権処理は進み、都市銀行は一応の目途はついたかにみえる。
しかし、4月からのペイオフに絡みこれから地域金融機関の不良債権処理や郵政民営化を控え郵貯・簡保・財投関連資産処理の対応のため不動産流動化のスキームが急速に進んでいる。
収益還元法と土地価格形成
なぜ地価ゼロ現象が生じたのであろうか。それは、地価下落による不良債権処理や、資本収益率重視の経営、企業会計基準の変更(時価会計・減損会計の導入)などで資産を保有することのメリットが失われたためである。
このため、大企業を中心として資産のオフバランス化が急速に進行し、特に金融機関は整理統合の過程で発生した不良債権の担保となっていた大量の土地が市場に放出された。
これらのオフバランス化に伴い、不動産市場の流動化が進み新たに参入してきたのが、従来型の金融機関からの借入資金ではなくリップルウッドに代表されるようなリスクマネーの調達によって行われた。
これらのリスクマネーは、投資の基準を収益還元法による投資資金の回収という観点で行ってきた。
上場REITが収益還元法を定着させる
上記のような価格形成がデフレ期の不良債権処理という特殊な現象であればそう心配することもないが、これがノーマルな価格形成であるとすると大きな問題をはらむことになる。
幾多の不動産流動化スキームの中でREIT(不動産投資信託)による流動化スキームが証券市場に上場されるに及びREIT市場が形成されることとなった。このREIT市場の形成はこれからの不動産投資市場に収益還元法を定着させることとなろう。
「地価ゼロ」への恐怖
土地オーナーから見たとき、この収益還元法により賃貸不動産の価格が形成されるとなることは恐怖の極みである。なぜなら、所有している賃貸マンションを売却しようとすると、家賃収入と利回りで土地込み価格が決まってしまうからである。
賃貸マンションを建てるとき、殆どが金融機関からの借り入れによっている。したがって、賃貸マンションなどを建てたあと相続などで売却しなければならないときは土地価格が収益資産である建物の価格に吸収されてしまい、結局土地の価格が消えてしまいかねないのである。
土地オーナーはこれから資産の有効活用として賃貸マンションなどの賃貸事業を始めるとき賃貸物件の敷地を「現物出資」して事業を始めたことを自覚すべきである。自己資金でできる人は少ない。
金融機関からの融資(借入金)を利用して賃貸事業を始めるときは何があっても売らない、相続があっても売却しないで済むように納税資金対策と併せて慎重な計画に基づいて実行することが重要になろう。
(小川 湧三)
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