金融システム危機の本質を見失った?政府・日銀

金融システム危機の本質

金融システムの危機が言われてから久しいが、今度、株価の下落を受けて銀行が保有する個別企業の株式を買い上げて金融緩和を一層進めるという。

金融システムの危機はマネーが不足していることではない。金融機関が心筋梗塞を起こして本来の信用創造機能や仲介機能を失ってしまったことである。

日銀が金融機関にマネーをジャブジャブ供給してもその先へ流れていかず、日銀・金融機関・政府(国債)の間を回っていて直接金融の手段を持たない中堅・中小企業や経済が低迷する地方が必要な資金を得られないことである。

驚くことに経済団体や加藤寛氏がそのことを認めるかのように「地域通貨」の創設を提言したことである。日銀がいかにマネーを供給しても、地方や中小企業へ行き渡っていないためにマネーがないから自分たちで自分たちのマネーを作ろうと言うことである。

不良債権は結果であって原因ではない

政府・日銀の政策を見ていると不良債権処理が済めば金融システムが正常化するかのように言っているが不良債権は結果であって原因ではない。不良債権発生の真の原因は背後にある資産劣化を放置したことである。

地価下落が連続11年続いている。株価は9000円割れまで下落している。株価9500円割れを見てPKOとして日銀が株式買取を言い出したが本末転倒である。株式価値の下落を止めるには経済を良くし企業活動を活性化させることである。地価の下落を止めるには企業が活性化することである。廃業や倒産が新規創業を上回るような現状をなくすことである。

不良債権処理の前にやるべきことがある

金融機関を助けても金融システムの危機は去らない。助けるべきは実体経済の担い手である中小企業や地方経済である。

金融機関にいくら輸血しても心筋梗塞を直すまではペースメーカーとバイパス手術をしない限り血液は全身に流れない。直接金融に依存できない中小企業や地方へお金や仕事が流れない限り実体経済は良くならない。

不良債権処理を急ぐことは血流が止まって壊死したところを準備なしに切除するだけであって、むしろ体力を急速に衰えさせるだけである。「地域通貨」なり、まだ元気なところ、壊死しかかっているところを直接助けるバイパス手術を考えなければならないところへ差し掛かっていると考える。

やるべきことは①ペイオフの凍結と金融機関の国有化(集中治療室への入院)②中小企業へのセーフティネット(バイパス手術)③資産劣化防止政策があってその上での不良債権処理(患部の手術)でなければならない。

量的緩和政策は金融システムを崩壊させる

量的緩和政策は金融システムが有効に機能しているときに初めて効果があるが、供給した資金は、日銀・金融機関・政府(国債)の間を循環するだけで企業・地方経済へ回らず企業・地方経済を疲弊させている現状では金融システムはもはや機能していない。

したがって、量的緩和政策は有効性を持たないと言っても過言ではないであろう。「地域通貨」が公に提言されることは量的緩和が十分機能していないことの証左である。

(小川 湧三)

 


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