大衆は賢い

プロローグ

先日日本FP学界があり、その中で「わが国の家計の資産選択行動」に関して報告があり、特徴として預貯金の構成比が欧米と大きく異なっている旨の報告があった(平成13年「家計の金融資産に関する世論調査」金融広報中央委員会の貯蓄保有世帯の貯蓄保有額と種類別構成比)。

欧米の家計の金融資産構成が有価証券の割合と預貯金の割合が日本と逆に有価証券が多く占めているため、国民に預貯金から有価証券へシフトさせ株価上昇を期待してのことである。

笛吹けど踊らず

1990年から9月17日までの日経平均9504円までの日経平均(月足)のグラフに基準地価のグラフおよび「家計の金融資産に関する世論調査」から金融資産の占める預貯金の割合を補足記入したのが下の図表である。

地価、株価の低落に反比例して預貯金の割合が上昇しているのがわかる。インフレは預貯金を減価させるが、物価指数もディス・インフレからデフレに入った日本のマクロ経済においては、現金、預貯金の実質価値の増加をもたらす。

この意味で不動産、株価などの資産価値が減少する中で預貯金へ資産をシフトすることは懸命な選択であるといえよう。政府がいかような政策を採ろうとも資産価値維持への根本的な対策を採ったと感じない限り大衆は動かない。不良債権処理を急ぐより、資産劣化防止対策の方がより重要であると考える。

政策失敗と信頼喪失の10数年(合成の誤謬)

政府、日銀、政党の政策を見ていると目前の現象に対応する応急対策に終始してきたように見える。実物資産の価値が上昇しなければ、預貯金から不動産や株式へシフトしないのは前述のとおり当然である。

この10数年不動産対策は「ゼロ」、株価対策は目先のPKOに終始し、有価証券へ資金を向かわせる基本的な政策はなかったと感じている。

株価、土地の資産価値の下落はそのまま政策当局への信頼喪失指数と言えるのではないだろうか。この点で声なき大衆は行動で賢明な選択をしていると見るのが正しいと思うのである。

(小川 湧三)

 


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