そごう問題は中小企業にどのような影響を及ぼすか

 景気は回復したか

今年の1月の第10号で「いま、景気は台風の目の中にある」と書きました。政府は景気底入れを平成11年4月と発表し、このところ「日本経済は回復基調にある」といい、日銀も一部投資部門の回復基調からゼロ金利政策の解除の観測気球を上げ始めています。

しかし、有珠山の噴火、三宅島、神津島の噴火と不気味な自然活動が続き、多くの海外政策担当者が一様に日本経済がまだ重病から脱していないという見方を示している中、経済界に激震が走りました。台風の余波が始まったのではないでしょうか。

そごうの再建が断念され法的整理に委ねられることになりました。台風の引き金となった「住専問題」の処理の不手際から証券会社、銀行、生命保険会社の倒産が相次ぎ、60兆円に及ぶ公的資金の投入が行われた事が思い出されます。

そごう再建スキームの破綻は台風の余波の始まりか

そごう再建スキームの破綻は単にそごう一社に限られるものではなく、これから始まる大手ゼネコン、生命保険会社、流通産業など規制緩和対象業種の再建へのシンボルとしての意味合いを持っているからです。

すなわち、債権放棄による再建スキームが否定され、会社更生法や民事再生法による法的整理方式によることを余儀なくされることを意味し、連鎖倒産の激増や失業者の大量の発生が予想されます。

さらに、不良債権放棄によるスキームの時は比較的保護されてきていた中小金融機関や農協などの金融機関も法的整理により企業への貸し手責任を問われて巨大な損失を負うことになります。したがって、今後金融機関は問題企業の延命より切り捨てに向かうことが予想されます。

巨額の公的資金を注ぎ込んでようやく安定したかに見えた金融システムが住専問題のときと同じように金融システムの逆回転が始まる予兆のようです。

中小企業は生き残れるか

中小企業は消耗しきった体力の最後の力を振り絞った消耗戦に入ったのではないでしょうか。中小企業への貸し渋り対策として実施された5000万円を限度とする特別保証制度による融資は、再度延長され来年3月まで適用されることになっています。

しかし、既に返済期限の到来している中小企業では倒産激増の兆候がでています。さらに金融機関でも「たとえ保証付で回収リスクがないとはいえ、ムダ金になる可能性が大きいことから、融資を断ることが多くなってきている」ことです。

このうえ先程のように金融システムの逆回転が始まったら、単なる台風の余波とは言えず、新しい台風が余波と重なるような激しさとなるかもしれません。既に地方の商店街は過疎化して商店街の体をなしていないところが沢山あるそうです。

中国のWTO加入が実現すればデフレ傾向は一段と加速され、製造業の海外移転・工業地帯の空洞化も進んで行くでしょう。2002年にはどのくらいの中小企業が生き残れるのでしょうか。心配が杞憂に終わることを祈っています。

(小川 湧三)

 


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