こっそりと名義変更してしまったら…

Aさんは自宅と数千万円の金融資産、賃貸アパートを5棟所有する、70代後半の男性です。

20年前に妻を亡くしましたが、近所に住む長男の嫁のB子さんがあれこれと世話をしてくれるため、特に不自由もなく一人で暮らしてきました。AさんはB子さんを実の娘のように可愛がっており、彼女にも財産を遺したいのですが、他の子供達とは違い嫁の立場であるB子さんには相続の権利がありません。最近、体の衰えを感じるようになったAさんは急に心配になり、思い立って、賃貸アパート1棟を、こっそりとB子さん名義に書換えました。

ショックしかしある時、親しい友人に打ち明けたところ、思わぬことを言われました。

その名義の書換えは、贈与になるのでは?

Aさんは驚きました。しかも贈与税は約1千万円と高額になりそうで、支払うのはB子さんだというのです。Aさんは自分の迂闊さを悔みましたが、気を取り直し

B子さんにそんなお金はないのだから、自分がその1千万円を支払うしかない

と考えました。が、友人はさらに続けます。

それでは、その1千万円もB子さんへの贈与になってしまうよ

…………

ショックを受けたAさんは体調を崩し寝込んでしまいました。

贈与税とは、個人が個人に無償で財産を譲った(贈与した)時に、譲られた方が支払う税金です。無償での不動産の名義変更は贈与となるため、原則的には贈与税がかかります。

さて、前述のAさんの名義変更ですが、昭和39年に出された相続税個別通達で、「不動産の名義の変更が『過誤に基づき、または軽率に行われた場合』、贈与税の申告期限より前に名義を元に戻せば、贈与がなかったものとして取り扱う」とされているため、B子さんに贈与税が課税されることはありません。

Aさんは、B子さんを思うあまり深く考えることなく手続きをしてしまったのであり「過誤(あやまり)、軽率」に当たると思われます。

ではAさんに対してどんなアドバイスが出来るのか、少し考えてみましょう。B子さんをAさんの養子にするというのも1つの方法です。また遺言書を作成しB子さんに譲る財産を明確にするのも良いでしょう。

贈与税がかからないと聞いて安心したAさんは、すっかり元気を取り戻しました。専門の方に相談しながら、最善の方法を選ぼう、と気持ちを新たにするのでした。

 


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