メタバースで変わる企業活動

世の中にインターネットが普及し始めた20年前には、現在のような企業活動とネットとの強いつながりを想像していた人はほとんどいなかったと思う。スマートフォンも初めてiPhoneが発表されたときには商業的には成功しないとの懐疑的な声もきかれた。しかし現在ではインターネットやスマートフォンが企業活動に密接に関係することは誰もが承知している。そのインターネットを変えるといわれ、スマートフォンの普及ほどの衝撃になるだろうといわれるメタバースとは何なのか。
Facebookがメタバース開発を本格的に進める一環として社名をメタ・プラットフォームズ「Meta」に変更したのは記憶に新しいが、言葉としてのメタバース(metaverse)とは、英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語でその定義は曖昧である。理解する助けとしては映画「マトリックス」などのサイバースペースの一種で、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の機器を利用して体験する仮想空間だ。
その中であなたはアバター(分身)となり、会議に出席したりイベントに参加したりするが、その現実感の例をあげよう。
あなたが注文住宅を建てる決意を固めたとしよう。設計事務所とあなたは頭の中で建物の外観や内部の部屋をイメージして設計し、設計が完成したら次は工事で、部屋の内部のイメージイラストをいくつか造る設計事務所はほとんどない。
仮想空間では、設計した段階で仮想空間に家を建て、家族全員で家と自分のサイズを合わせたアバター(分身)となり、みんなでその家に入って動き回って動線を確認し、窓からの実際の景色を確認し、ドアは左右どちら開きがいいかを確認し、家具の大きさを確認し、あらゆる場所を体験して確認できる。そしてこのことは今すぐに可能なのだ。今ある機器と技術で可能で、近い将来に普及したあとは、この確認なしに注文住宅を建てることはないだろう。
この現実感のメタバースは物理的に存在しないが、新しい生活空間そのもので、そこでは距離や空間や質量の制約はない。米不動産仲介会社「Spx リアルティ」ではすでに世界中の7万人が仮想オフィスに出社して働いているし、独BMWは仮想空間に自動車工場を本物さながらに再現し、技術者がアバター(分身)となって作業をシミュレーションする。身体的な制約がないので、障がい者や高齢者もハンディがない。
人々が集まる場所ではデジタル不動産の価格が上昇し、さらに商業経済活動が活発になり、すでにデジタル不動産は市場で売買されている。
これらは会計的に見ると無形固定資産であり、現在の会計基準では測りにくい。会計基準は物を扱う販売や製造業を主眼につくられていて、形のないメタバースの不動産や通貨として流通するトークンの扱いが明確でない。
メタバースへの期待は、過剰な投機につながっている感もあるが、ネットやスマホが生まれてから現在のデジタル社会になるまでの短い時間を考えると、一部のマニアやゲームの世界にかぎった事ととらえてしまうよりは、我々自身とのかかわりを模索すべきだ。この20年でインターネットと世界は急激に変化した。それがまだメタバースと共に加速するとすれば、かかわり方を真剣に考えるべきだろう。

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