第66回 チャットGPTについての包括的なレビュー⑨

情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力
前々回、前回に続き、今回は深津式プロンプト5要素の ④ 制約条件 ⑤ 表現方法 について解説します。とくに ④ 制約条件 は出力する文章の内容を大きく左右する重要なものとなります。
今後生成AIを上手く活用する上でも重要なポイントです。
④ 制約条件について
制約条件は出力されるデータを制御するコントローラー
制約条件は生成AIをコントロールする上で重要な役割を果たします。例えば、画像を含む入力情報に日付のあるデータがある場合出力条件に日付の出力形式を定めずに、画像から年月日を抽出してという命令文(以下「プロンプト」と表記)を書くとします。
例として、画像に23年1月1日と記載されているデータがあるとします。このデータを生成AIへアップし、出力すると、生成AIは下記のようなパターンの答えをしてきます。
生成AIの解答例:
•2023年1月1日 •2023-1-1 •2023/01/01
単に検索するだけならこれでもいいのですが、出された回答からなんらかのデータを作成したい場合にバラバラの表記だと使いにくいのが現状です。
そこで制約条件に下記のような文章をいれることで一定の答えに統一されます。
生成AIへのプロンプト例:
•日付の出力は西暦の日付(yyyy/mm/ddの形式)で表記してください。
この一文をいれるだけで元のデータが和暦のものでも西暦に換算して出力します。制約条件がデータ出力のコントローラーといわれる所以です。
結果として非定型の情報に強い
前回の記事でも触れましたが、従来の画像AIでは非定型の情報からは非定型のまま出てしまい、利用できるようにするのに人力で修正作業が必要でした。しかしながら、画像AIと生成AIが融合すると、画像AIが出力したバラバラな文字データを生成AIのプロンプトで意味のある文字データにすることができるようになります。
通帳やクレジットカードの明細書などのように列でデータがある程度、構成されてるものについては従来の画像AIの解析で十分な結果が出せていましたが、請求書やレシートなど文字情報の中に列等の定形情報のない画像には画像AIでデータを出力させても精度の低いデータしか出せませんでした。このバラバラなデータをプロンプトにより生成AIへどのような情報が入力されていて、そこから何を出力したいのかの指示を送ることで意味のあるデータにしてくれるのです。
⑤ 表現方法について
表現方法は出力結果を盛りがちな生成AIを制御
生成AIは回答を少々脚色する傾向にあります。
例として「犬」に「かわいい」という表現を加えてと指示した場合、創造性を上げた場合「ふわふわのかわいい犬」というように「ふわふわ」というような文面をつけます。創造性を下げた場合は単純にかわいい犬と表記します。これはアイデアを回答したり物語を作成する上で必要な機能の一つですが、正確な情報を得るにあたってはあまり必要なものではありません。この盛りがちな機能はtemperature(テンプラチャー)という機能で調整することができます。
生成AIに下記のような表現方法で表現方法のプロンプトに表記します。
生成AIへのプロンプト例:
表現方法はtemperatur=0でお願いします。
上記の設定でほぼ脚色のない表現になります。
生成AIにもよりますが、一般的にこのtemperaturは0−1までの表記で0が事実に近く、1が創造性を最大にした表記になります。
ビジネスにおいて、下記のような数字で使うことで、意図したデータが生成されます。
データ生成関連業務:0
コンサルタント系の提案型の業務:0.5~
以上、深津式プロンプトの ④ 制約条件 ⑤ 表現方法 について説明いたしました。生成AIの回答精度を上げるには ④ 制約条件 が肝となります。入力の情報が複雑でもこの制約条件をわかりやすいプロンプトにすることで、ほしい回答が得られるようになります。
ここ数カ月の新聞報道や専門誌を見ていても生成AIの進化には凄まじいものがあります。現状の生成AIでも事務入力作業の代行をできるレベルを実現していますが、生成AIには文字データだけでなく動画や音声等のデータから総合的に答えを導き出すマルチモーダルという処理能力を有しています。
2023年12月6日Googleがこのマルチモーダル機能をさらに強化したことを発表しました。今後数週間に渡ってローンチされていく模様です。
また、オープンAIのアルトマンCEOの解任騒動の元となったといわれる「Q(キュースター)」。これは生成AIが苦手とする数学的推論能力を上げるためのプロジェクトですが、この推論能力が研究により飛躍的に向上、この扱いで解任騒動までの騒ぎになったといわれています。生成AIがこの推論能力を得たとするといよいよ汎用型人工知能誕生が現実味を帯びてきます。
次回は生成AIのマルチモーダルとQについて触れていきたいと思います。
《参考文献》
『「万能AI」進む研究開発 オープンAIの新計画浮上 自律的に学習、数百万の課題処理 人類脅かす可能性も』
2023年12月1日付 日本経済新聞
『AI、音声・画像・文字で学習 グーグルは新基盤提供 開発競争は新たな段階に』
2023年12月7日付 日本経済新聞

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