第58回 試される人工知能「チャットGPT」の実力
情報セキュリティ連載
第58回 試される人工知能「チャットGPT」の実力
チャットGPTについての包括的なレビュー①

今回は米マイクロソフト社が検索エンジンに搭載して話題となった人工知能「チャットGPT」についてです。
GPTとはGenerative Pretrained Transformerの略で人工知能の一種である自然言語処理の文章生成言語モデルと呼ばれます。このGPTの学習には転移学習(人工知能の学習モデルの一種)という学習モデルが利用され急速に成長しました。
1 転移学習とは
転移学習とは人工知能の学習モデルの一種で既存の学習モデルを構造だけ他の学習に転用できる学習モデルです。人工知能の学習モデルを作り上げるには膨大な量の問題と答えがセットになったデータを学習させる必要があり時間もかかることから、この転移学習という手法が用いられるようになりました。転移学習は元々少量の学習データで学習モデルを生成できるので、ここに大量の学習データを読み込ませることで急速に学習精度を上げることが可能です。
結果、オープンAIが開発するGPT-3は人間の話す言語の意味を理解してそれに対応した精度の高い回答をするようになりました。この言語モデルGTP-3は「チャットGPT」というチャットボットのサービスに利用されています。
2 チャットGPTの実力
チャットGPTのサービスはオープンAIのサイトでアカウント登録をするだけで無料で利用することができます。今回の記事を書くにあたり下記のような質問をチャットGPTにしてみました。
「チャットGPTの特徴や今後の利用、欠点について記事を書いて」
これに対しチャットGPTの回答は以下のようなものでした。
ChatGPT(OpenAI)は、自然言語生成を主とする大規模な言語モデルです。
♣ 特徴
自然言語生成の能力が高い:ChatGPTは人工知能に基づいて、自然な文章を生成することができます。
大規模なトレーニングデータを使用:ChatGPTは、Web上から収集された大量のテキストデータを使用してトレーニングされています。このため、幅広いトピックに対応することができます。
APIを使用することができる:OpenAIはAPIを提供しており、開発者はChatGPTを使用して、自分のアプリケーションやサービスを開発することができます。
♣ 利用
チャットボットの開発:ChatGPTを使用することで、自然な会話をするチャットボットを簡単に開発することができます。
情報検索の補助:ChatGPTは、質問に対する回答を生成することができます。これにより、情報検索の補助として利用することができます。
コンテンツ生成:ChatGPTは、文章や小説などのコンテンツを生成することができます。これにより、作家の代わりとして利用することができます。
♣ 欠点
意図を汲み取れないことがある:ChatGPTは、トレーニングデータから学習した内容を生成するため、時には意図を汲み取れないことがあります。
不適切な内容の生成:ChatGPTは、トレーニングデータに含まれる不適切な内容を生成することがあります。これを避けるためには、トレーニングデータに含まれる内容に注意を払う必要があります。
どうでしょうか。質問の特徴、利用、欠点という質問に対し的確に回答しています。質問内容が具体的な方が、より具体的な回答をすることができます。チャットGPTが回答した答えにさらに質問する形です。例えば上記の回答のうち大規模なトレーニングについて質問をすると、より具体的な回答が返ってきました。
また、Excel関数やVBAの質問に対しての回答もコードを表示して回答します。
チャットGPTにExcelに関する質問をしてみました。
質問内容「ExcelをクリアするVBAのコードを教えて」
チャットGPTの回答
ExcelのシートをクリアするためのVBAコードは次のようになります
vbnet
Copy code
Sub ClearSheet()
Dim ws As Worksheet
Set ws = ThisWorkbook.Sheets(“Sheet1”) ‘シート名を変更する場合はここを修正
ws.Cells.ClearContents
End Sub
このコードは、現在のワークブック内の「Sheet1」シートの内容をすべて削除します。別のシートをクリアする場合は、「Sheet1」の部分を対象のシート名に変更してください。
この回答にも驚きました。例としてシート名の部分を「Sheet1」と挙げ、シート名を変更する場合はここを修正とコード上に表記しています。「’(シングルコーテーション)」を付けることで「’」以下がコードではない表記をしていることもできています。Excelのマクロを起動して上記のコードを貼付ければ、実際にマクロは動きます。
3 チャットGPTの今後について
マイクロソフト社はまずこのチャットGPTを自社の検索エンジンに搭載しました。検索結果とは別にチャットGPTの回答も並列して回答するようになりました。今後、エクセルやワードにも組み込まれる予定です。
チャットGPTについては周囲の反応は好意的なものから懐疑的なものまで様々です。今後Googleも自然言語モデル「ラムダ」を搭載したアプリケーション「バード」を検索で利用できるようにするなど、対話型の人工知能の開発がさらに活発になると思われます。
次回はチャットGPTの登録から使い方、対抗馬Googleの自然言語に対する取り組み、自然言語モデルに対する懸念点などについて触れていきたいと思います。
《参考文献》
『マイクロソフト、AI新興に追加投資 数十億ドル』2023年1月24日付 日本経済新聞 夕刊
OpenAI URL:https://chat.openai.com/

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