パンデミック②

潜在感染者

アルベール・カミュの「ペスト」は有名であるが、もう1つロンドンでのペストの流行を描いたダニエル・デフォーの潜在感染者の恐ろしさについてわかりやすく示唆に富んだ記述があったのでご紹介したい。

「ペスト」ダニエル・デフォー中公文庫(p.347~)

「後人の考察に資するために、人から人へ病気がどういうふうにして感染してゆくか、その経路についてもう少し述べておくべきであろうと思う。つまり、病気が直接に健康な他の人にうつってゆくのは、けっして病人からばかりでなく、また健康人からでもあるということを言いたいのである。」…

「健康人だが、私がここでいう意味は、病毒は受けている、実際に体にもっている、血の中にもっている、しかも顔には何の徴候も示してはいない、いや、自分でも病気のことに気がついていない、何日間も気がついていないーーそういう人間の謂である。」…

「ほんとうに健康な人々が恐れなければならないのはじつにこの種の人間であった。しかし、それにしても、どうやったらその見分けがつくのかだれにもわからなかった。」…

「ひとたび悪疫が流行しだした時、鋭意、あらんかぎりの人知をつくしてその蔓延を防ごうとしても、これがついに不可能だったのもこのためであった。すでに感染した人間と健全な人間との区別がどうしてもできなかったのだ。」…

「実際、自分がいつ、どこで、どうして病気をうつされたらしい、また、だれからうつされたらしい、ということのいえる人は、まず一人もないだろう。」

コロナ戦争においては、見えない敵(コロナ)をどう見つけるか、見つけた敵(コロナ)をどう隔離し、どう戦うかが最大の課題となる。前号でも書いたが、「感染を恐れず、重症化を防ぐ」を旗印にコロナ戦を戦い「早期発見・早期隔離・早期治療」を徹底することが、経済のV字回復にもつながるものと確信している。

しかるに、西村経済再生担当大臣は何を考えているのであろうか。

5月25日NHKのニュース報道によれば、共産党の倉林明子氏が「…PCR検査…の実施件数をどこまで増やそうとしているか」とただした。それに対して西村大臣は「実施目標を作るというのは患者を増やせということになるので、そういうことは考えていない」と述べ、「72億円の予算を活用し…検査体制を整えたい」と述べた。

新たな患者が増えるから検査をしない、症状が出た人に診断を確定するために検査をするという趣旨の発言をしているのである。

感染を恐れず、重症化を防ぐ

2カ月にも及ぶ緊急事態宣言は何のために行ったのか。数百兆円にも及ぶ経済損失を出しながら国民に重い負担を強いる政策をとったのは何のためなのか。

1つは感染の暴発を抑えることである。しかし、これだけではないのは素人でもわかる。もう1つは、コロナと戦う準備を整えることである。ワクチンや治療薬などの武器の開発、病院や医師・看護師に対する戦闘装備の準備・開発、さらにエッセンシャル・ワーカーの人たちへの支援体制を整えるのが本当の目的であろう。

戦闘態勢が整ったから「さあ、コロナとの戦いの準備はできた。国民の皆さん、検査の済んだ人から正常な活動に戻ってください。残念なことに検査に引っかかった人は、1カ月隔離施設で観察してください。命に係わる重症化をしないように、「3密」ならぬ「3S」で「早期発見・早期隔離・早期治療」を徹底しましょう。経済のV字回復を目指しましょう」と声をかけてほしい、と願っていた。

岩田健太郎氏が週刊東洋経済(5/2-9)の取材で答えているように、(政府は)「稼いだ時間の上にあぐらをかき何の対策も準備してこなかった」と言わざるを得ない。

ちなみに武漢では9日間で全市民の検査を完了したそうである。

政府は緊急事態宣言に関連して、国民へ「持続化給付金」「特別定額給付金」など家計・企業への支援として30兆円をこえる直接の補助金を出している。甚大な損害を国民に与えているのである。コロナ防衛予算はたった72億円などと言わず、経済のV字回復を目指して、既存の医療体制から切り離したコロナ防衛対策を実施してほしいものである。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三
 

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