実物資産としての金

クローバー通信 No.144

「有事の金」

昨年の英国のEU離脱の決定や米国のトランプ大統領誕生、北朝鮮やシリア情勢など、景気の後退局面や需要増、戦争や紛争などの政治・経済情勢が不安定な「有事」の時に金価格は上昇しやすい傾向にあります。

なぜ金価格が上昇するのか?

金を持つ事の意味を探っていきましょう。

1 金の特徴

金は限りある希少性の高い資源として、宝飾品、地金・コインの他、産業用の資源として重要な役割を果たしています。

また、金はその物自体に価値がある実物資産です。物でありながら「世界に通用するおかね」として普遍的な価値を保ち続け、金の保有量がその国の通貨を安定させる要因として機能しています。

世界中どこでも24時間取引でき、流動性・換金性が高い反面、保有していても金利はつきません。また金の取引価格は日々変動し、米ドル建てで決定されるため、国内価格は為替の影響をうけます。

2 金の価格変動

金の価格は米ドルの信頼度と密接な関係があり、米国の国家・財政危機などドルへの不安が高まると金が買われ、ドルが高くなると金の需要が減り価格が下がる、という相関性があります。
金価格の上昇要因としては、産業用の需給関係の他、①ドルの信頼度の低下②債券相場の下落③中国・インド経済の成長④金投資商品の多様化、などがあげられます。

3 購入する際のポイント

金地金① 地金とコイン どちらを選ぶ?

金地金(きんじがね)

板状の塊・延べ棒(5g~1kg)で、取引の際500g以上は手数料なしで、500g未満は別途割増しの手数料(スモールチャージ)がかかります。

金コイン金地金型コイン

地金と同様に毎日の金価格+プレミアム(加工コスト・流通コスト)が上乗せされた価格で取引されます。
※500g未満の場合は、コインの方が売買価格の差が小さく有利と言えます。 保管・換金性・資金額など目的に合わせて選びましょう。

② 純金積立

少額から積み立てられる純金積立。毎日定額を買い付けていくので〔ドルコスト平均法〕により安定的に購入できます。

◆ 保管方法 どちらを選ぶ?

純金積立の保管に関しては、積立会社によって2つの取扱方法があります。積立会社を選ぶ際に確認しましょう。

特定保管とは?

積立会社の資産と顧客の資産をはっきり区別して保管します。会社が倒産したとしても、100%保証されます。
[田中貴金属工業・石福金属興業のみ]

消費寄託とは?

積立会社に地金の所有権が移転し、顧客が返還請求できる権利を持ちます。会社が倒産した場合には、100%すべてが戻ってくる保証はないのですが、会社の資産として運用できるため、その利益の一部を顧客に還元し手数料が安くできる仕組みとなっています。

◆ 純金積立にかかる費用

コスト比較各社により異なる為、年間総コストを比較しましょう。
購入手数料:購入金額×2.5%~3.5%。
購入金額に応じて手数料率が異なる会社もあります。
年会費:無料~3,240円

4 税金の取扱い

① 購入時

金地金や地金型コインを購入する際には、消費税がかかります。
消費税は購入する側の負担となるため、購入時は消費税を支払い、売却時には業者から消費税を受け取る事になります。

② 保有時

金の保有に関しては課税されません。

③ 売却時

地金・コインを給与所得者などが売却し利益が出た場合の所得は、原則譲渡所得として課税されます。給料など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。

所有期間5年以内:課税所得=譲渡益−特別控除50万円
所有期間5年超:課税所得=(譲渡益−特別控除50万円)×1/2
        ※譲渡益=売却価格−(購入価格+売却費用)
純金積立などで継続して購入した金の売却益は雑所得、個人事業主の場合は事業所得として取り扱われます。
※売却して損失が出た場合、他の譲渡所得とのみ損益通算できます。

④ 相続・贈与時

相続税・贈与税の課税対象となります。この場合相続開始時(死亡日)・贈与の日の小売価格(時価)で評価されます。
※相続・贈与により取得した金地金・コインを売却した場合は 相続前の取得価格・所有期間を引き継ぎます。

類似商品 プラチナとの違い

プラチナプラチナも、金と同じ様に宝飾品の他、資産として地金・コイン・積立による購入ができます。金が「通貨」としての価値を持つのに対し、プラチナは希少価値が高いため、供給量が少なく市場規模も小さい事、約6割が工業用(うち4割が自動車触媒)として使用されてる事から、景気動向にも左右されやすく、激しい値動きをする場合があります。

5 決済通貨としての金

イギリスでは、買い物の支払いを「金(ゴールド)」でできるデビットカードが、今年6月に誕生します。金を購入・預託し、カードの使用代金分の金を売却して支払いに充てるというシステムで、日本にも来年には上陸する予定です。

アメリカでは、アリゾナ州・アイダホ州・ユタ州の議会で、金をドルと共に通貨として認める法案が可決され、すべての決済に金券(金の保有証書)を使用する準備が進んでいるそうです。
どちらも「金」がふたたび通貨に変わる決済機能を持ち始めたという最近の話題ですが、ここ数年続く各国の通貨安競争において、基軸通貨としての「ドル」・日本を含む各国の「紙幣」の信頼性が薄れてきている事の表れではないでしょうか?

ますます「金」の重要性が高まる事が予想されます。

まとめ

資産分散の1つとして…

資産分散の一つとして、金の組み入れを検討しましょう。預金・債券・株式が信用の低下により紙くずになる可能性を持ち合わせているのに対し、金は世界中で流通している実物資産であり、価値がなくなる事はありません。また株式や通貨と違う値動きをするので、リスクの分散になります。一般的には、資産の10%程度を所有するのが理想的なバランスとされています。
資産形成として純金積立を、有事の備えとして換金性の高いコインなどをご家族への贈り物にするのも良いかもしれません。

 

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