タワマン節税

会長富裕層のシンボル

タワーマンションは富裕層のシンボルである。その富裕層のシンボルであるタワーマンションが節税商品として人気を博している。

富裕層のシンボルは今までは芦屋、田園調布などエリアや面的な広がりの集積地としての〝高級住宅地〟や〝山の手〟という面的な広がり感覚ではなかったと思う。それが遠くから見える超高層マンションとして目の前に視覚的に誰にでも見える形で出現したのである。

このタワーマンションが富裕層の節税の道具になっている。

裕福な人々に特別な利益をもたらし、裕福な人々がますます裕福になる、このことが格差問題と連動して一般の国民感情の痛みに塩をすり込むような感情をしているのではなかろうか。

格差社会のシンボル

タワーマンションはまた格差社会のシンボルでもある。トマ・ピケティが「21世紀の資本論」で格差論を論じたのは2年前である。アメリカのトランプ大統領が誕生したのはアメリカの戦後の発展を工場労働者として支えてきた白人労働者たちであったという。かつては世界の工場であったアメリカが第二次世界大戦後はドイツや日本、ベルリンの壁崩壊後は中国の工場労働者によって職を奪われ、中流以下に没落してしまった人たちで、これらの中流から下流に脱落した白人労働者の支持を集めた。

これらの先駆けとなった〝ティーパーティ運動〟や〝ウォール街占拠事件〟など中間層の没落を象徴する事件の集大成がトランプ現象ではないかと思う。

日本も1990年以来波状的な産業空洞化が生じ20年を超える経済の低迷、デフレの中にいでいる。テント村に象徴されるようにワーキング・プア、非正規労働者の増加、孤独死・貧困世帯の増加などが社会問題化しており、中小企業数の減少も止まることなく中間層の減少と共に問題化している。

タワマン問題の所在

税制改正の季節になり数年来話題となっていたタワマン節税にも手が付けられることになった。報道によれば地方税法の固定資産税の課税について改正され相続財産の評価方法にも反映される見込みのようだ。

タワマン節税の概要はご承知の方も多いと思うが、タワーマンションの売り出し価格が1億円であっても、相続税の対象となる評価が5,000千万とか6,000万円とか云われ、差額の4~5,000万円が相続財産の価格が少なくなり、そのために相続税の負担が軽くなる。手持ち資金で購入すれば、1億円の預金が減って、6,000万円のマンションが増えることになり、差額が相続財産が減少し、相続税が減少することになる。最高税率が55%だから最高2,200万円の節税となる。

普通ならお金からモノに変えても、その後の価格変動によって価値が変わっていくことについては誰も異論はないであろう。しかし、お金からモノに変えた瞬間に利益が出てしまう、あるいは、節税効果が出てしまうことについては一般常識では考えられないことである。一般国民の常識とかけ離れた、しかも、誰でもができることではなく、できるのは富裕層に限られるところが、タワマン節税に対して関心を高めていると思うのである。

タワマン節税はなぜ生れるか

タワマン節税はなぜ生じるのか?

タワマン節税と同じスキームの購入価格と評価額との評価差額を利用するスキームはバブル期以前からあり古くて新しい問題である。相続税の課税価格を計算する基本の考え方は「時価」が基本である。しかし、公正価値=フェアバリューによらず財産評価通達によって評価した価額を「時価」とする(財産評価基本通達一(二))ところに第一の問題点がある。

相続税の重税感

タワマン節税はなぜ生まれてくるのか。第二の問題点は相続税に重税感が強いことである。相続財産のうち不動産(土地)が80~90%を占め、現金納付が原則である相続税では納税資金が不足し、不動産を売却して納税しなければならないことである。このため不動産中心の相続税評価額を減らすために不動産を買う、という悪循環に陥っているのである。

第三の問題点は課税の本質論に及ぶ相続税と所得税の二重課税問題である。この問題も以前から指摘されているが、課税当局は「相続税の取得費加算」に留め問題の所在を認識しながらも放置している。

二重課税の問題については別の機会に論じたい。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


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