起業をしやすく

贈与税オンパレード

平成 27 年度の政府予算の概算要求の時期がきた。この時期になるとい ろいろな税制についても要求が出される。

アベノミクスの成長戦略がこれから本格的に法令化、予算化されてくるのであるが、成長戦略の一環として高齢者の金融資産を活用したいと、い ろいろなアイデアが出さ れている。その一つは、 高齢者が持つ資産を次世代へ移転させる方策として贈与を盛んに薦めていることである。

①教育資金贈与非課税枠1500万円から3000万円へ拡大
②NISA子供の非課税枠 80 万円の創設
③老親介護の視点から同居や近居を促進する贈与

などが提案されて いる。贈与税オンパレー ドである。

超高齢化社会の生存 コスト

生産活動年齢を超えた らその後の自分の生きていくための費用(生存コスト)は、自分が元気な時に残したお金に働いて貰う以外にないのである。ゼロ金利が続いている現在、減りこそすれ増えることはない。このような環境下で高齢者に対して子や孫への資金贈与を進めるのはいかがなものであろうか。

贈与はおおむね贈与者が 60 歳代まで自分で稼いだお金の余剰の中から行うのが良い。 60 歳を超えたら自分の100歳までの資金を残しておくことが求められる。週刊「エ コノミスト」6月 21 日号によれば、「老後費用1億円!」と出ていた。デフレ脱却を目指しインフレ社会を目指しているアベノミクスを考えると もっともっと上乗せして考えておかなければならないと思うのである。

起業社会の創造へ

高齢者の資産を経済活性化に利用しようとすることは成長戦略にとっても大事な視点であることに異論をはさむつもりはない。しかし、老後に不安を覚える高齢者からの贈与を考えるなら、高所得者の資金を活用することを考える方がもっと効果が上がるし、政策優先度が高いと思う。

最近「よい資本主義、悪い資本主義」を斜め読 みした。資本主義を起業家へのインセンティブの四つの視点から論じているが、良い資本主義は「起業家資本主義と大資本資本主義とを正しくミックスさせた体制」だと論じていた。

私は「中小企業は国の宝。中小企業の繁栄は資本主義のシンボル」と思っている。デフレから脱却するにはこの本にあるように起業家が続々と輩出できる起業家資本主義社会でなければインパクトある成長は望めないのではないかと感じている。

エンジェルたちが 生まれやすく

税理士の立場から言えば、日本の税制は起業家が生まれにくい税制に なっている。

すなわち、日本の所得税制では資本損失は原則として所得から控除されない。親や兄弟や友人たちが子や友人の起業を応援しようと資金を提供して、仮に起業が失敗して回収ができなくても〝出し損〞で控除されない。起業・創業時に必要な資金の調達がしにくい制度になっている。

起業資金は金融機関から融資を受けるしかないのである。

親などが資金を出すには自ずと限界がある。アメリカのようにゆとりある高齢者や高所得者の個人エンジェルたちが資金の出し手として手を挙げられるように、身近なエ ンジェルの出現しやすい制度を考えてほしいものである。

前出の訳者あとがきによれば「経済を真に力強く成長させるのは、起業家である。しかも、成熟 した先進国ほど、起業家 を活性化させなければならない」という。アベノ ミクスは成長戦略として雇用機会を増やすことを取り上げているが、雇用も大事だが雇用を創出する起業を活性化すること がもっと大事である。

会社法も起業型の会社法になったものと理解している。日本も早くアメ リカのシリコンバレーのような起業家社会が実現 し、経済成長の起爆剤と なって欲しいと願ってい る。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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