賃貸物件の取得とその名義

第271回 財産承継研究会

講師
㈱LR小川会計 渡部 寛二

相続税対策として、借金をして賃貸物件を建てると相続税が低くなる、という話を聞いたことがある方は少なくないでしょう。では、なぜそのような効果が出るのか説明します。

まず、相続税を計算する上で、貸家の相続税評価額は、「固定資産税評価額×70%」貸家の敷地の相続税評価額は、「路線価×80%程度」となります。(図1)

例えば、2億円の現金の相続税評価は2億円のままですが、2億円の賃貸物件を建てた場合の建物の評価は約1億円となります。現金2億円と2億円で建てた建物の評価額では異なり、相続税評価額の減額、相続税の圧縮効果が現れます。

以上のことから、手持ち現金で建築する場合と借金をして建築する場合は、(図2)にあるように、相続税評価は変わらないわけです。

利息の支払いがない、キャッシュフローが良い(空室・家賃下落などの不況抵抗力が高い)といった長所があるため、賃貸物件を取得する場合、できるだけ手持ち資金を入れて行った方が資金繰りは楽になります。

建物の名義についていうと、

①土地所有者
②妻・子供
③財産管理法人

といった例が挙げられますが、それぞれの長所・短所については以下の通りです。

①土地所有者名義

長所:相続税評価減額効果
短所:減額効果の逓減、課税財産の逓増

②妻・子名義

長所:妻・子の資産形成
短所:相続税評価減効果無し

③財産管理法人

長所:所得分散…役員報酬、給与所得控除、納税資金対策、長期的財産対策
短所:短期的評価減効果無し

土地所有者が借金をして賃貸物件を取得した場合の、相続税評価の減額効果をシミュレーションしたものと法人名義で取得した時の相続税との比較が(図4)です。

個人名義で取得した建物の評価は下がりますが、賃貸物件から得た手残りの現金(累計CF)が増えていき、一方で債務である借金が減っていくという流れになっています。新築時には、減額効果があり、相続税は所有者名義の方が低い結果となっていますが、10年も経過すると、所有者名義と法人名義で相続税の減額効果が逆転するということをこの表は表しています。

長期的な対策としては、法人名義の場合が有利なことも考えられますし、個人所得の多寡によってキャッシュフローは違ってきますので、賃貸物件の取得を検討される場合はご相談ください。

♥ 次回の財産承継研究会の開催日 ♥

2011年7月22日(金) 18時30分~20時30分

☎044-811-1211(渡部・駒まで)

お申し込みは こちら

 


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