ある税理士の会合での報告

先日、全国の税理士の集まりがあり、仙台の税理士からも報告があった。仙台の2万件の事業所、1事業所当たり5人、約10 万人の雇用のうち、今回の災害により8万人の失業保険の申請があったとのことである。また、関西以西の税理士からは、復興特需が殺到し通常の3倍5倍の受注があるが、資材が間に合わないという報告があった。

明治になって外国に追いつけ追い越せと産業は国営で興し、民間に払い下げて産業の振興をはかった。第二次世界大戦の敗戦後は、傾斜配分方式を取って重点産業へ資金と物資を重点的に配分し川上から川下へ順次産業を復興してきた。そんなことを思い出し、東日本大震災の報道を目にしながら、これからの復旧・復興のあり方を考えている。

地場産業の復興には産業復興債を

私は常々経済あっての福祉だと考えている。今回の地震・津波被害の中心地は世界有数の漁業資源に恵まれた水産業の盛んな地域である。その地場産業の中心、特に漁業は中小企業としては漁船・加工場など、相当額の資本装備を要する産業である。

その漁業が、今回の東日本大震災では津波によってフローだけではなく、ストックである産業資本が根こそぎ破壊されしまった。この点、リーマンショックやバブル崩壊によりフローが止まったのとは根本的に異なり、明治維新、関東大震災、戦後の復興と共通するところである。

この失われたストック・産業資本の再生には金融政策だけではカバーしきれるものではないことは誰の目にも明らかである。明治初期の産業政策(国営→払下) のように、あるいは、終戦後の産業政策(傾斜生産)のように国が積極的に産業政策の復興にかかわって、立ち直った分野から民間に委譲していく政策が必要である。

明治維新や戦後復興と違う点は、人もノウハウもマーケットも揃っているのである。これらが劣化しないうちに早急に再建するには、産業復興債により資金を調達しストックを早急に補う必要がある。

産業復興債は回収される

膨大なストックの消失を回復するには膨大な資金が必要なことは誰もが理解しており、国債発行や増税の是非が論じられている。しかし、この膨大な産業復興に必要な資金は増税によらず、産業復興債によって時期を失せずに産業の復興を図るべきものである。

産業復興の枠組みさえしっかりしていれば、産業復興債は産業復興の暁には順次民間に払い下げていくことによって回収されるものである。国が主体となって地場産業に必要な産業資本の整備を一日でも早く行い、復興・再建することを望むものである。

産業の復興は生活再建 への道標

一方、コミュニティの再建にはコミュニティを支えるコミュニティ産業の再建が欠かせない。仮設住宅に店舗が併設されることとなったと報道されているので良かったと思う。

コミュニティ産業は地場産業の再建・復興とは異なり、日々の仕入代金の調達が円滑に行けばとりあえず営業が再開できる。このコミュニティ産業の復興支援には、短期間の営業運転資金を 「グラミン銀行方式」で供給するのが有効であると考える。これには地域金融機関のきめ細かいフォローが必要である。

今回の災害で壊滅的な打撃を受けた金融機関もあり、金融支援政策も続々と整備されつつあるが、「新旧勘定の分離」を早急に行い、地域産業、生活再建に向けた融資を積極的に取り組めるように望むものである。事業は一人ではできない。産業を復興させることは雇用を生み、所得を生み生活を再建する源である。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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