新しい中小企業金融のあり方を求めて

改正貸金業法の施行

改正貸金業法が6月18 日に完全施行された。上限金利の制限と貸し金の総額規制である。いまま でこれらのローンを利用していた小零細企業に融資していた貸金業者は三分の一にまで減少し、利用していた中小企業者の倒産の多発が心配されている。

終戦直後、私の父は鉄筋業を営んでいたのだが、子どもながら父が 10人前後の近隣の事業者の人たちと毎月集まって「頼母子講」をやって資金の融通をつけていたのを記憶している。

週刊ダイヤモンド 7月 31日号によれば、「貧困と借金にあえぐ沖縄県民」の項で現在でも県民の3分の2の人たちが、「頼母子講」に似た「もあい」に参加していると報じてい る。

機械的な金融政策のあり 方からの脱却

地域金融機関の主役であり中小企業とともに歩んできた第二地銀、信用金庫、信用組合が、20 年来のデフレの中で合併に継ぐ合併でいつの間にか中小企業者から遠い、顔の見えない金融機関になってしまった。その金融機関が合併の過程の中でさらに中小企業をふるいにかけて残った安全な中小企業だけを相手にするようになって久しい。

融資の返済能力でふるいにかける金融システムや、改正貸金業法や金融システムに欠けているのは規制を厳しくするだけではなく、その一方で、 金融機関と貸金業者の間の限界的状況にいる限界小零細事業者にスポットを当てるシステムである。ふるい落とすのではなく育て、成長させるための金融制度が求められる。

グラミン銀行のマイクロファイナンス

バングラディッシュのグラミン銀行で始まったマイクロファイナンスは、経済取引の埒外に置かれていた女性たち、金貸しの餌食になっていた女性たちの自立を図るためにわずか十数ドルの無担保融資からはじめた。それでも回収率は 99 %と非常に高い回収率である。

なぜ成功したのか、その原因は様々であるが、私なりにまとめてみると、ビジネス・リテラシーを育て高めるグループ活動を主導し、女性たちの自立を資金面とあわせて支援したからと考えている。

グラミン銀行のマイク ロファイナンスの仕組みは現在世界各地に広がっており、ニューズウイーク7月21日号の伝えるところによればアメリカのニューヨークでも、今まで銀行口座を開けず、ビジネスから取り残された貧困層の人たちに対して始まっていることを伝えて いる。

創業型社会へのもう一つのアプローチ

グラミン方式のマイクロファイナンスのモデルは日本にそのまま適用できるとは思わないが、中小企業者やマイクロビジネス、SOHO ビジネスを志している人々を育てる仕組みを組み込んだ新しい「マイクロファイナンス」モデルを日本でも立ち上げる必要がある。

大阪の橋下知事が改正貸金業法の施行を受けて、「借りやすい貸し金特区」構想を提案していたが、これは「グラミン方式マイクロファイナンス特区」としてマイクロビジネスを支援する構想に衣替えして実現して欲しいし、日本振興銀行には不祥事を乗り越えて、既存の金融機関と貸金業者の隙間を埋める新しい金融のビジネスモデルを創造して欲しいと願っている。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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