「ふるさと納税」の実現を

税の季節がやってきた

No120_9312013毎年恒例の確定申告の時期である。もう既に確定申告を済ませた方もあるだろうが、これから申告という方も多いと思う。
今年から始まった制度がある。それは昨年度の税制改正のときに議論された「ふるさと納税」が換骨奪胎されて地方自治体への寄付金を住民税から税額控除の対象とする新たな住民税の税額控除方式が始まったのである。この原稿を書いている2月16日の確定申告受付開始日現在では、当事務所ではまだ受け付けていない。

昨年6月の本欄に海野七生氏の著書を引用して「私は大賛成・ふるさと納税」のタイトルで掲載した。そのなかで『21世紀は、どこの国で税金を払うかを、納税者が選べる時代になるだろう。税収を確保するためにも、税制度は「魅力的」に変わる必要がある。』(p・230)。

この部分を「21世紀は、どこの『国(出身地や居住地)』で税金を払うかを、納税者が選べる時代にしよう。」と読み替えて多様な魅力を持つ活力ある地域・地方が出てくるような税制を期待したい。』と書いた。

今年から実施されている税額控除方式は当時提唱された「ふるさと納税」とは全く似てもいないものになっている。

「ふるさと納税」には様々な可能性がある。

「ふるさと納税」制度にはその設計の仕方によっては様々な可能性がある。住民税の納税先を納税者が選ぶ方式にするか、国税の一部を納税者が指定する方式とするかその他議論すべき点は沢山あるが、これを受け取る地方自治体は市町村とし、市町村の自主財源として通常予算とは別に予算化できるようにしてはどうであろうか。

できれば「ふるさと納税者」に予算書を送付、説明会を実施し、意見を求めるようにすれば、さらに有意義なものになろう。

災害復旧に苦しむ自治体をどう応援するか

私は新潟県の出身である。新潟県は、中越地震やその前にも地震の被害や豪雪地帯として、地域内の経済だけではまかないきれない費用を要する。それらは過疎地となりやすい地方ではまかないきれない。

ところが「ふるさと納税制度」ができれば、自分の「ふるさと納税」を災害地復興に当てるように、たとえば地震災害に遭った山古志村へ納税し、復興支援することもできる。災害義捐金一口千円で「ハイ、終わり」で済ませている現在と比べても格段に地方への関心が高まるであろう。

いま、「限界自治、夕張検証」(梧桐書院)という読売新聞北海道支社夕張支局の女性記者が追った600日のドキュメンタリーを読んでいるが、「ふるさと納税制度」ができれば、悲鳴を上げている夕張市民のために夕張市へ「ふるさと納税」をしたいと考える全国の人たちも大勢出てくるのではなかろうか。

地方を「長寿高齢者の桃源郷」にしよう

地方には地方のよさがある。特に時間軸が異なるところだ。都会の喧騒と人間の生体リズムとはかけ離れた機械的な時間に追われる生活から、自然に囲まれ、子供の頃に見た山や景色、木々や植物の自然の時間に囲まれ、ゆったりと流れる生活は、長寿社会における高齢者にとっては何ものにも代えがたい環境である。

不ぞろいを覚悟すれば食料は自給自足でき、それなりの年齢に関係なく働く場所もある。金額には換算できない生活の充実感がえられる長寿高齢者の桃源郷を出現させることができるのではなかろうか。

「ふるさと納税」は地方を活性化させる

「ふるさと納税」は地方を活性化させる。たとえば、市町村は「ふるさと納税」で実現したいろいろなわが町の施策を「ふるさと納税者」に対する説明会や、紹介するイベントを開催することなどによって、全国各地に居住する「ふるさと納税者」と交流することができる。

交流することによって、地方には新しい息吹が吹き込まれるし、自分たちが気がつかなかった自分たちの良さ、地方の良さにも気がつき新たな動きが加速されるであろう。

また、「ふるさと納税」はいま大きな課題となっている首都圏と地方の格差を解消させるばかりではなく、いま政府が進めている「二地域居住」政策を定着させる効果も大きい。さらには、首都圏と地方の特性を活かす新しい産業の創出や地方の消費支出を増加させ、内需を創出させる大きな力にもなると思うのである。

LRパートナーズ代表社員 小川 湧三

 


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