TOC(制約条件の理論)は利益最大化の法則
設備や人員は現状どおりで在庫を 減らし、利益を増やす、なんてこ とが実際に可能なのでしょうか?
1984年日本語翻訳禁止の産業小説「ザ・ゴール」 物理学者エリヤフ ・ゴールド ラット氏がアメリカで1984 年に出版したこの小説は、中国語を含む十数ヶ国語に翻訳され、世界で250万部も売れたと言われたベストセラーだったにも係わらず、「この経営管理手法を日本が使い始めると、強力な競争力を 持ち脅威となる恐れがある」という当時の理由で邦訳がなされず、邦訳版が出たのは初版から 17 年も遅れた2001年のことでした。
黄色に黒字の本が山積みになっていたことをご記憶の方も多いと思います。出版と同時に多くの企業から自社のことをモデルにしたのではないか、という問合せが相次ぎ、著作の中の手法を実行することで企業改善が成功したという事例すら出たと言います。
■短期間で利益増大の効果、大幅な経営改善の切り札
アメリカ、日本で報告されているTOCによる経営改善の成功事例を読むと、TOCの導入効果が次のように現れて、経常利益の増大に結びついているようです。
●粗利総額の増加( 63%増)
●リードタイム短縮( 70%短縮)
● 品質向上・仕損じ減少
● 納期遵守度の向上( 44 %向上)
● 在庫減少( 49 %減少)
● サイクルタイムの短縮( 65 % 短縮)
● 督促の減少
● サイクル短縮による資金回転率の向上
● 顧客からの信頼性向上
● 納入ロットサイズが小さくなることによって、顧客側の在庫減少への貢献、満足度の向上
● 右記のような現象を通じた企業競争力の強化、そしてその結果としての経常利益の改善
「ザ・ゴール」で描かれていた 物語が、現実のものとなっている のです。
■TOCのポイントは 制約条件を発見すること
TOC理論は、工程全体の中に必ず生じるボトルネック(生産工程を制約してしまい、前の工程に仕掛品を作り、後工程の手待ちを作ってしまう条件・部署)を発見し、その部分の解消をすることで納期の遅れや仕掛在庫の増大を防ぐことに重要なポイントがあります。
簡単に説明すると、左表のような 工程を持っている会社では、Cがボトルネックになるために、各工程が最大の生産能力を発揮しても、実際の完成品は1時間に5個以上にはなりません。AとBの工程には、処理しきれな い仕掛在庫が山積し、在庫金額の増大が起きてしまいます。
また、前工程の人員は自分の手元の在庫が解消されないと次の仕事に着手できませんので、手待ち時間も生じます。更に仕掛品は現金にはなってい ませんから、最終的な利益増には結びつきません。そこでC工程の処理能力に合せて、Cが手待ちにならない分だけの作業を前工程が行えば、材料の在庫は減少し、仕掛在庫も大幅に減少します。完成商品の数は変わらないのに前工程の負担は軽減されることになります。
また、仕上げ工程の5個を生産するためにA、B工程に必要な人員 は 1人ずつだったとすれば、前工程の人員をC工程に入れるように教育すれば、C工程の完成能力は向上しますし、手待ち人員を販売部門に配転するなどの対応も可能になってきます。これがTOCのシンプルかつ現実的な優れた部分です。
日本では「かんばん方式」と いう独自の生産方式がありますが、「かんばん方式」からTOCに変える企業も増えています。かんばん方式では、それぞれの工程に投入される部品の納期は遅れてはならないことが大前提です。そのため、部品の製造を行う中小企業は大規模な設備や多数の人員を抱えなければ対応ができないケースが生じます。
そういった点を比較すると、生産に必要な最小公倍数の人員と設備だけ持てば良いので企業経営の負担が軽くなり、利益は増えるというTOC理論が中小企業の経営に役立つ意味がご理解いただけるのではないかと考えています。
■「TOC」と「MG」の共通点
このような効果が得られるTOCも日本に紹介されて6年が経過し、より具体的な経営管理ツールとして発達してきました。日本のTOCの推進者である新潟県新潟市の清水信博氏(ソ フトパワー研究所主宰)のTOC研修は、当社でお奨めしている西 順一郎先生が考案されたマネジメント・ゲーム(MG )の「戦略的会計S・T・R・A・C(ストラック ) 」 を積極的に取り入れたところに最大の特徴があります。
MGで学ぶ、企業の収益構造をわかりやすく「四畳半の図形」を使って表した「S・T・R・A・C表 ( 現在はMQ会計表に変更)」が、ま さにTOCで言うところの「スループット会計」のことなのです。
また、在庫の考え方も、現在の原価計算の主流である 「全部原価制度(FC)」ではなく、「直接原価制度(DC)」で評価する点も全く同じなのです。 ( 直接労務費と間接費を原価に配賦する=全部原価制度。直接労務費や間接費を配賦せず、原材料でしか評価 しない=直接原価制度。つまり、「売れてなんぼ」であって、在庫は売れるまでに単に材料をこじらせたものでしかないという考え方です。)
ソフトパワー研究所では、衝撃的な生産革命をもたらした著作 「ザ・ゴール」に見られる倒産寸前の企業が数ヶ月で利益は倍に、在庫は半減、リードタイム短縮な ど、驚異的な復活を遂げたあのTOC理論を、たった2日間で、MGと同じくゲームを通じて楽しく身につけることができる「TOCセミナー」も開催されています。
今の原価計算の仕組みは会社の利益にどう影響しているのか。そしてフルコスティング(全部原価計算)では原価低減、コストダウンが決して利益アップにはつながらないことが実感できるという ことで、当社でもこのTOC研修プログラムとして採りいれました。
■「TOC」と「MG」は、戦略経営の必需品
お客さまの企業経営改善のために相互に学びあう場を作り、より良い経営に向かうためのお手伝いをするために、今後もMGやTOCをお客さまにご紹介していこうと考えています。
経営セミナーなど座学の講義も悪くはないのですが、ゲームや 計算を通じて、最適な生産割合のシミュレーションを行うことで、より科学的な企業経営を体感することができるという点でこの2つの研修プログラムをお奨めしているのです。
TOCは、今後、MGと合せて当社主催の研修プログラムとしてご提供していく予定にしていますので、開催のご案内まで今しばらくお待ちください。
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