タックスペイヤーの視点で考える

岐阜県裏金報道

No91_101589月はじめから岐阜県裏金問題が報道されている。日本経済新聞9月2日39面“県民「あきれかえる」岐阜県裏金総額17億円”の見出しで「1992年から12年間で捻出された裏金は総額17億円に上り、岐阜県民の間には県への怒りや不信感が渦巻いていた。」と報じていた。

税金などの不正使用には、いくつかの類型に分けることができる。

①今回のような私的消費に当てるもの
②実質的な予算の目的外流用に便乗して行われるもの
③職員に対する異常な給与手当てなど制度化された中で行われたもの
④官製談合のように発注権者が発注先や発注額を調整して天下り先を確保したり、便益を受けるためにおこなわれるもの

また、

⑤特定の団体等の献金等により立法によるものもある。

岐阜県の裏金問題は岐阜県だけのものではなく、広く多くの自治体で一般的に行われていることを推測させるものである。

①については北海道警察はじめとした警察関係の捜査協力費用の不正流用、外務省の不正流用事件があり、②ついては、直近では、大阪府の諸手当問題がある。③④⑤については道路公団、社会保険庁、郵政など枚挙にいとまがないくらいある。

これらはいずれも公務員の金銭感覚を失わせ、その異常さは国民が安心して税金や年金保険料を安心して政府に委託する気にはならないほど酷い。このような事が明らかになったことは、小泉前内閣の構造改革路線の成果の一つであると評価するものである。

しかし、反面、安心して国民の税金や資産を預けることに不信感を増してきた。特に国民年金・厚生年金の未加入・未納率の高さはこれら不信感の反映といっても言い過ぎではない。

税に対する責任は官民公平か?

納税は憲法に定められた国民の義務である。それだけに税に対する責任は税を使う者は納税者に勝るより大きな責任を負わなければならない。

この視点から見ると、税金を納税する国民は脱税する意思がなくても納税については結果責任を負っており1円でも納税額が少なければ過少申告加算税というペナルティとそれまでの利息に相当する延滞税を支払わなければならない。ましてや、脱税の意思が認められれば重加算税や懲役まで課されているのである。

これに対して①②のように、国や地方公共団体の職員(公務員)が、国民が額に汗して納税した税金を私的に消費するのは論外としても、その使い方に対する責任の所在は極めて曖昧といわなければならない。

公務員は議会で成立した法律により準拠して行政を執行するのが職務であることを理由に、議会はその法律の作成が合議によっていることを理由に、それぞれ、責任を負わないのが現状である。行政の不作為や不適切な執行についても同様である。

④のような官製談合にしても、民間へのペナルティに比較すれば発注者へは極めて軽い処分にしか見えない。このような国家組織はタックスペイヤーの立場から見て全く納得のいかない制度といわなければならない。

安心して税金を預けられる政府に

No91_101371いま、構造改革を旗印に進んできた小泉内閣が終わり新しい政権が発足した。新政権に望むものは単に人数を削減するばかりの公務員制度の改革ではなく、その内容も思い切って変えるべきである。

一つは、公務員のトップを現在の年次順送り人事から内閣が任命する政策人事への変更である。予算制度も現在の単年度主義からプロジェクト型の複数年度制度に変え政策に結果責任を明らかにできる複数年度継続型の予算制度に変えたらどうか。

議会にも責任を持たせなければならない。企業に株主代表訴訟があるように、議会に対しても国民に損害を与えた時はその法案に賛成した議員に損害を賠償させる代表訴訟制度を導入すべきである。

さらに、「権力は絶対的に腐敗する」といわれるように、利益誘導型の政治に対しては新政権による前政権の政策評価・審査を行わせ公表する制度を導入したらどうだろうか。新政権に、安心して税金や国民の資産と将来を預けられる国家組織にして欲しいと望むものである。

(小川 湧三)

 


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