株式会社の監査役
監査役がいらなくなる
五月から新会社法が施行され、株式会社でも監査役がいなくとも良くなった。取締役も一人でもよくなった。
もちろん、証券取引所に上場されている株式会社では監査役ばかりでなく監査役会を置かなければならない会社もあるが、今までの私たちのお客さまである有限会社や株式会社制度を取る大多数の中小企業では監査役はいなくても良くなったし、3名以上の取締役がいなければならず、やむなく知人や友人に名前だけでも借りて体裁を整えていたものが、これからはそういう気遣いはしなくても良くなったのは喜ばしい。
なぜ株式会社では監査役がいらない?
一見社会の趨勢に逆行し矛盾するかに見える「監査役をおかなくてもいい新会社法」はどのようにしてできたのであろうか。監査役の役割は、株主に代わって取締役の業務執行を監督することから始まっている。
今までの株式会社制度は、大勢の株主を集めて事業に必要な資金を調達する上場会社を典型的な株式会社として想定していた。したがって、大勢の株主に代わって取締役の業務執行を監視する監査役が必要だったのである。
そして、規模が小さな株式会社をどこまで簡略にするかという視点から監査役を置かないでも良い有限会社制度が生まれた経緯がある。
しかし、新会社法は全く逆方向の視点から株式会社制度を考えた。すなわち、起業を志し、事業を行うために「必要な最低限の機関」を備えた、生まれたばかりの企業組織を株式会社の原点とし、規模が大きくなるしたがって機関を整備していくこととしたのが今回の会社法である。
いままで、大多数の中小企業では、株主=経営者のため、自分のことを自分で監査することとなって、監査役を置く実益が無いのに監査役を置いたために有名無実の制度と化していた。
起業の草創期における一円株式会社や一人株式会社が認められたことにより、一人株主・一人取締役の会社がわざわざ監査役を置いて自分のことを監査する実益がないために監査役を置かないでよいこととしたのである。有限会社制度を廃止したのも小規模会社を別に区別する必要がなくなったからである。
監査役は不要か?監査役に代わる会計参与制度
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では監査役は不要かとういと起業が成功し企業規模が大きくなるにつれて金融機関、取引先、消費者との関わりが多くなり社会的責任が生じてくる。さらには株主が大勢になるにつれて取締役への監視役としての監査役の役割も求められてくる。
監査役制度はその企業の対外的信用を図るバロメータになる可能性がある。これからは株式会社であっても内容が充実した会社かどうかは一見しただけでは分からない。唯一の頼りは財務諸表と登記簿謄本である。
一人会社でも起業する者の当然の義務として財務諸表は作成しなければならない。この財務諸表に正確性の保証を与えるのが監査役であり、会計参与である。監査役や会計参与のいない会社の財務諸表は正確性の保証をする者がいないために信頼性に欠け、監査役や会計参与がいることが会社信用の第一歩となるのである。
新会社法は中小企業の財務諸表に信頼性を付与する制度として「会計参与」の制度をあらたに作った。会計参与は税理士、公認会計士、税理士法人、監査法人など社外の会計の専門家が会社の財務諸表作成することにより会社の財務諸表に信頼性を付与することとしたのである。
重くなった監査役・会計参与の責任。
新会社法では監査役や会計参与には実質的な責任を負わせることとなり、財務諸表に不実の記載があり、それにより株主や第三者に損害を与えた場合には損害賠償の責任を負うこととなった。これからはいわゆる名前だけの監査役や会計参与では務まらない時代になったのである。
(小川 湧三)
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