節税商品・高利回り商品
航空機リース(レバレッジド・リース)に対する節税対策に対して名古屋国税局を中心に全国で約140人の投資家に対して追徴課税したが、第一審、第二審とも国税局が敗訴し、最高裁判所に上告することを断念し、全員に対して課税を取り消すこととした。
140人全員が訴訟をしたかどうか分からないが、訴訟当事者だけに限らず追徴課税した全員に対して自発的に課税を取り消すことも珍しいことである。
航空機リース(レバレッジド・リース)とは
航空機リースは航空機の耐用年数が税法上の耐用年数と実際の使用年数が乖離していること(実際の使用年数が倍以上長い)を利用して、その利益の繰り延べ効果による節税効果を商品化したリースである。
その効果をさらに増幅するために借入金を組み合わせることにより節税効果(レバレッジ効果)を極端に高めたものである。
航空機リース事業は、投資家が任意組合を作り出資金と借入金で航空機を購入、航空機会社に機体を貸し出し、賃貸料(リース収入)を受け取る仕組みである。
当初数年間は機体の減価償却費がリース収入を上回るため赤字になり、この赤字を投資家の他の所得と通算すため申告所得が圧縮される。
航空機リースの問題点
このスキームは10年以上前から存在し、適法なスキームとして認められていたものである。しかし、私たちはこのスキームを敢えてお客さまにはお勧めしてこなかった。
当初数年間は機体の減価償却費がリース収入を上回るため赤字になり、節税効果が顕著であるが、後半は逆にリース収入として入る収益が計上され、税負担が実情以上に過重になるため、極めて厳重なキャッシュフロー・マネジメントが要求されるからである。
要するに後半にでる利益を圧縮するためにさらにこのスキームのリースを使わざるを得ず蟻地獄に陥りやすいと判断し、10年後、15年後の出口戦略が立てられないためお勧めしてこなかったものである。
とりあえず相談を
航空機リースと同じスキームの節税商品として融資つき一時払い変額保険がある。相続税対策として販売された。
私たちはこの保険は契約してすぐ保険事故が発生すれば効果が最大だが長生きをすればするほど節税効果が少なくなり、7―12年で逆に負担が大きくなるため“親不孝保険”としてお勧めしなかった。節税は大切だが、節税商品の中には注意しなければならないものもある。
低金利時代のいま、高利回り商品の売り込みが多くなってきている。最近も2%の定期預金の金利を提示されたが、仕組みがよくわからないので教えて欲しいと相談があった。
提示してきた金融機関から説明を受けて、為替のオプション取引が組み込まれていること、金融機関にリスクなしの手数料が入ること、為替が一定条件を充たしたときは逆に預金者に為替差損が生じることを説明したことがある。
金融自由化を受けて多種多様な商品開発が行われている。節税商品や高利回り商品を奨められたときは、そのメリットに対してリスクも含んでいることが多いので、とりあえず、相談をして欲しいと思うのである。金融機関や販売業者から奨められている商品の特性をよく知って決めても遅くはない。
(小川 湧三)
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