中小企業の会計に関する指針
中小企業が財務諸表を作成するときに拠るべき「中小企業の会計に関する指針」が日本税理士連合会(日税連)、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の四団体から今年8月3日付けで公表された。
これにより各団体ごとに出されていた「中小企業の会計指針(案)は廃止されて8月3日以後開始する事業年度から統一的に適用されることになった。
指針の中で特に留意すべき項目
指針は公認会計士監査を前提とした「企業会計基準」を中小企業の実情に即して適用できるように指針として示したものである。企業会計原則と税法の乖離として指摘されていた事項をそのよるべき基準を明らかにした点で評価できるものである。
指針で示された会計基準の中で特に留意すべき事項は①税効果会計②減損会計③退職給付債務・退職給付引当金の会計処理である。これら新しく定められた基準は中小企業、特にバブル期以前から存在していた中小企業には後で述べるようにボディブローのように効いてくるであろう。
指針と税理士の立場
指針作成の基となった「中小企業会計基準」が日本税理士連合会が最初に提案したことが示すように、税理士にも大きな影響を及ぼす。
今まで税理士は税法に反して過小な利益を表示することにはきわめて敏感であるが、反面、過大に表示することについては、極めて無関心であった。減価償却費による利益調整はその最たるものである。
しかし、今後、指針は税理士を拘束することになろう。仮に税法で認められていても指針に反する場合は注記が必要になり、注記を怠れば税理士としての資質が問われることにもなる。
中小企業は適正表示を求められている
このことは中小企業にとっても名実ともに経営内容を表示する財務諸表の重要性が格段に高まってきたことを認識すべきであろう。
指針は直接的には株式会社の財務諸表に適用するものであるが、有限会社や合資・合名会社もこの指針によるべく求められているため、生業・家業を問わず会社形態で事業を営むものにかかる財務諸表はすべてこの指針の適用を受ける。
事業の大小に関わらず財務諸表の内容がこの指針に従って適切に表示されるように求められているものと言わなければならない。
指針が中小企業に及ぼす影響
日税連が平成14年12月に「中小会社会計基準」を公表し、会員税理士向けに「中小会社会計基準適用に関するチェック・リスト」を公表してから一部金融機関が同チェック・リストの添付を条件に融資基準を緩和し、積極的に中小企業向け無担保ビジネスローンを商品化したことである。
いま中小企業へ融資する金融機関は従来のように個別審査をするのではなくまず財務諸表によりスコアリング分析し、その後事情勘案を加えると言う形に移行してきている。
中小企業へ融資する金融機関は従来のように個別審査をするのではなく、まず財務諸表により分析しその後事情勘案を加えると言う形に移行してきている。当事務所のお客さまの財務諸表の約20%は債務超過の状態にあり、この債務超過状態を解消しないと融資を受けることは困難な状態にある。
今後、融資を受けるには財務諸表の内容が一段と重要視されるようになっているのである。
(小川 湧三)
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