増税に向かう税制改正

政府税制調査会が6月にまとめる今後の税制改正の方向が打ち出した。景気の動向が下ぶれ懸念される折個人に的を絞った増税を打ち出したことは中小企業にとって非常に気にかかることである。

報道された税制改正の方向

報道された税制改正の方向は所得税において所得控除の見直し、給与所得控除の見直し、退職所得控除の見直しなどでサラリーマンや団塊世代をターゲットにし増税による財政再建を目指すものである。

高齢世代に対してはすでに老年者控除の廃止、公的年金控除の圧縮、公的年金保険料の引き上げ、健康保険の自己負担率の引き上げなどが実施されており、どれだけ負担が重くなったか別表に計算例を示したとおりである。

増税ムードは景気の警戒信号

景気はいま微妙な時期に差しかかっている。アメリカと中国の景気に支えられて始まった景気回復も、病人に例えれば重湯からお粥、お粥から普通のご飯へ変わった所であって、病気が完治したわけではない。まだ病人であることは、景気が水面下にあることは未だ消費者物価指数がマイナスであることからも明らかである。

しかも、今まで日本の景気を引っ張ってきたアメリカと中国の景気に警戒信号が出ている。原油高がアメリカの景気を直撃しようとし、中国も反日デモに見るように異変が感じられ、識者の多くは2008年のオリンピックまで無事に成長を続けることができるか懸念を示している。

このような時期に増税ムードが高まることは、さらに消費心理を冷やしてしまい、病人に無理をさせ病気を再発させることになりかねない。

税制改正は増減税ニュートラルに

所得税制を各種控除を整理しシンプルな形にすることは賛成であるが、あわせて税率の引き下げを実施し、税制改正が増税にならないように増減税のイコールフィッティングが必要である。

政府には増税の前にまだまだやるべきことがある。最近発行された渡部昇一氏の「税高くして国亡ぶ」の中に、目から鱗の次のような一節があったので次に紹介する。

社会保険庁や郵政事業の壮大な無駄遣いを見聞きすると殊のほか胸に響くものがある。また、5月14日に放送されたNHKスペシャル「明治③税制改革・官と民の攻防:封印された改革原案が物語る理想の国家とは。」は税制改革のあり方を示唆するものである。

(小川 湧三)


脱税よりも悪い税金の浪費

政府もマスコミも国民も肝に銘じておかなければいけないのは、「脱税以上に悪いものがある」と言うことである。脱税以上に悪いものとは、税金の不正支出、不適切な支出である。つまり、浪費である。

「税金の浪費は、脱税以上の罪に値する」、このことはよく知っておかなければならない。だからと言って、出すべき税金は大いにちょろまかせというわけではない。利益の半分以上も税金で取られ、そのうえ税金を浪費されれば、誰も稼ぎたくなくなるし、国民の富は海外へ流出するしかないということである。

(渡部昇一、「税高くして国滅ぶ」p.227)

 


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