第29回 サイバー攻撃に使われだすAI技術②
情報セキュリティ連載
〜人工知能の種類と発達の過程〜
今回からは人工知能の種類についてです。
人工知能は、1950年代から現在までに3度のブームが到来し、発達、形成されてきました。
1 人工知能の分類
人工知能は処理できるレベルに応じて分類されています。レベル1から4まで分類されていますが、レベル1は人工知能には分類されず制御工学というものになります。
★レベル1:制御システム
温度の自動調節ができるエアコンや剃り方を自動調節できる電気シェーバー
★レベル2:古典的な人工知能
自動掃除ロボット
★レベル3:機械学習を取り入れた人工知能
検索エンジンや渋滞予測システム
★レベル4:深層学習を取り入れた人工知能
自動翻訳、音声認識
2 古典的な人工知能について
古典的な人工知能で主に研究されたのは、探索推論、知識表現です。
❖探索推論
製品でいうとルンバなどの自動掃除ロボットが挙げられます。
「探索・推論」とは主に迷路や将棋、チェス等のボードゲームを解く為に研究されています。ゴールするために迷路の分岐やゲームの対戦ごとに先を予測してゴールを導きます。
ゴールまでの分岐が2~3個ならコンピューターのメモリも大して消費しないため計算はスムーズに行きますが、ボードゲームの場合この分岐が100個、200個になってくるためメモリ不足を起こし計算が止まってしまいます。
そこで経験測上、条件分岐の中でもあまり選ばれない方法を最初から外すモンテカルロ法などの方法が開発されます。
ただ、それでも残る条件が膨大すぎてしまう状況が出てしまい、これを解決するためにレベル3の機械学習という手法へ研究がすすめられて行きます。
❖知識表現
もう一つが知識表現です。現在使われているものとしてbot(ボット)が挙げられます。ある特定のルールに従い会話を機械的に処理するものです。これを人工無脳と呼びます。
人工無脳は人の「問い」に対してオウム返しで返答するだけで全くその会話の意味を理解していません。
ただ、返答された人間はまるで、人が答えているかのような錯覚に陥ります。これをイライザ効果と呼びます。
この効果がエキスパートシステムという専門家のような受け答えをするシステムの開発につながっていきます。
様々な分野の医療の知識をルールベースで構築しますが、ここで大きな壁にぶつかります。
人間の経験則というものです。この経験則をルール化させることは予想以上に難しく、人間が考える概念をルール化させようとするようになり、オントロジーという知識を体系化する研究が進められます。
結果としてIBMが開発した「ワトソン」が生まれ、クイズ番組で人間チャンピオンに勝利します。
ただ、このオントロジーも知識をルール化したもので、ルールにないものに対しては全く歯がたたない状況でした。そのため、知識表現もレベル3の機械学習へ研究が進められます。
3 古典的人工知能の問題点
古典的な人工知能はプログラムに一つ一つルールを記載して作成しているため、限られた状況下でないと機能しないという問題を抱えます。その一例がフレーム問題という問題です。
フレーム問題とは、ルールに記載されていない事ができないという問題です。
実際にあるホテルであった話ですが、旅行客が受付ロボットでチェックインの処理をした時の話です。
チェックインはロボットにより正常に終わり、鍵を受け取り旅行客は部屋へ向かいます。しかし、ここで問題が起こります。
旅行客が部屋に入った後にフロントにカバンを置き忘れたことに気づき、慌ててフロントへ戻ります。
幸いフロントにカバンはありましたが先程受付をしてくれたロボットはそのカバンに目もくれず「いらっしゃいませ」というだけでした。
受付を人間が行っていればこのカバンはすぐに対応され旅行客の元へ戻ったはずです。
客が荷物を忘れている場合は対応をするというルールがプログラムされていないため、荷物が放置されたままとなりました。ルールがプログラムされていない為ですが、カバンを忘れるという状況以外にも想定外の状況は様々ありこれをプログラムに記載することは非常に困難です。
フレーム問題が解決出来ず人工知能開発は下火になります。しかしながら、研究者たちはプログラムと人間の差である身体がこのフレーム問題の解決に深く関わってることに気づきだし、身体から得られる感覚的信号を機械が自ら学ぶ研究(シンボルグラウンディング問題、特徴量計算の研究など)を始め、レベル3の機械学習の研究へ進んでいきます(シンボルグラウンディング問題、特徴量計算は次回にお話いたします)。
機械学習の研究が自動運転や事務作業など人間の作業を代行できる技術の研究を生み出していきます。ここから一気に人工知能の世界は発達していき、人間を凌駕する存在へと成長していきます。次回はこの機械学習について触れていきます。
《参考文献》
ディープラーニングG検定公式テキスト斉藤康己著『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』

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