マイナス金利、国債誰が買う?

アンコールワットにて日銀マイナス金利採用

1月29日日本銀行の政策決定会合で量的質的緩和策に金利政策として新たにマイナス金利政策を採用した。昨年末のFRB利上げで、円安に振れるものと想定されていたにもかかわらず、中東情勢の悪化、原油価格の暴落、中国経済の変調など年初来の新興国異変をうけて、思うような円安基調が戻らないためにマイナス金利の導入に踏み切ったといわれている。

しかし、マイナス金利のサプライズは一週間も続かず、更に逆ブレして円高にぶれてしまっている。

日本国債誰が買う

国債のマイナス金利は一昨年の春ごろから始まっているが、これは日本銀行の量的緩和を受けて、金融機関が最終的なアンカーとして日本銀行に買ってもらうことを前提にした「日銀トレード」が前提になっているのである。

「マイナス金利宣言」をした後2月9日にはついに10年物国債(長期金利の指標)もマイナス金利に突入し、金融運用商品が消えてしまうというように混乱の輪が広がっている。

日本銀行は量的緩和を続けていて年間80兆円の国債を購入することを継続しており、IMFの調査報告などによれば、日本銀行の国債購入は2017年にはGDPを凌駕し購入の限界に達すると云われている。

実質的なマイナス金利は既に「国債バブル」を引き起こしているが、今度の「マイナス金利」宣言はマイナス幅を更に自由に広げることもでき「国債バブル」を青天井に開放したといわなければならない。

NHKの解説では額面100円利率1%の国債を105円で買うと満期まで持つと4円の損失が発生する。しかし、国債が106円107円と価格が上がると想定すれば売り抜けるチャンスがあり利益を得るチャンスがある、と説明していた。誰が106円、107円で買うのであろうか。日本銀行である。

量的にも行き詰まり日本銀行が国債の購入をやめれば日本銀行以外に誰が国債を買うのだろうか。完全に「日本銀行による財政ファイナンス」の状況に入ったものと誰でもが思うのではなかろうか。そうなれば、財政再建の意思なしとして、いつ「国債の格下げ」が発生してもおかしくはない。

なぜマイナス金利?

私がマイナス金利に関心を持ったのは1990年後半金融危機のとき「貸し剥し」が盛んに言われ、中小企業はじめ経済全体にお金が回らなくなって中小企業の資金繰り倒産が多発した頃である。

資金繰りに困った中小企業やお金がなくサービスを受けられなくなった市民が無尽や頼母子講などの相互金融や、第一次世界大戦後の大恐慌で苦しんだドイツやオーストリアで国に頼らない「地域通貨」などが流通している実態の紹介などを通じて、その理論的背景となっていた「自由貨幣」「減価する貨幣」という考え方が紹介され、その本質が「マイナス金利」にあることを知った。

二つのマイナス金利

マイナス金利には二つのマイナス金利がある。

その一つは「お金が足りない側から見たマイナス金利」であり、もう一つは「お金が有り余っている側からのマイナス金利」である。

最初の「お金が足りない側のマイナス金利」はシルビオ・ゲゼル、ミヒャエル・エンデなどが唱えた、「自由貨幣」あるいは「減価する貨幣」であり、資本主義に内在する利子の不自然さに対する考察から生まれたものである。

1920年代の大恐慌に端を発して退蔵される貨幣、あるいは不足している貨幣を補うものとして「地域通貨」を流通させ地域経済や生活を再建させようと貨幣の流通を強制するためにマイナス金利を付して貨幣が淀みなく流通する貨幣制度を考え、かつ、実践していた。

いま起きているマイナス金利は「お金が有り余っている側からのマイナス金利」である。リーマンショック以後世界中の中央銀行がお札を刷りまくって、刷りまくって金があふれ出し、お金を預かりきれなくなって、預かり賃をよこせと言っているに等しいのである。

いつ「そんなお金(国債)は受け取れないよ」とそっぽを向かれるかもしれない不気味さがある。

ジョン・K・ガルブレイスは[バブルの物語]の中で「暴落の前に金融の天才がいる」と言っている。

マイナス金利を決断した日銀は金融の天才かもしれない。いつお金の逆襲が始まってもおかしくはないと思うのである。

 

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三


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