中小企業の悲鳴が聞こえる

無条件「償還猶予」を設けた、緊急保証制度を求む

中小企業の悲鳴が聞こえる

No121_16481677今年の1月のある例会の中での話から始まった。「5月まで8割減産を申し渡された」と、ある社長さんが口火を切った。隣の座っていた社長さんは「そう言ってくれるだけでも良い方ですよ。うちなんかは黙って発注カットですよ」。

2月のある日お客さまが息せき切って駆け込んでこられて「親会社から在庫調整のため7月まで発注を取りやめる。」といわれ、整理する資金があるうちに会社を廃業したいが、どうしたらよいか、という相談であった。

また他の方は、あるメガバンクとの間で8千万円の融資枠を設定して、その範囲内で資金繰りをしていたが、今年に入って融資枠の取り止めを通告されて、資金繰りに窮し、会社を続けるにはどうしたらよいか、必死で資金繰りの道を探しておられた。

さらにある社長さんは、この急激な受注減に遭って有力都銀に返済猶予の条件変更の依頼に行ったら「他行も含めた同時条件でなければ応じられない」と突っぱねられたと言われ、条件変更すれば金利が1%高くなるとも言われた、と話をしていた。

今、緊急にすべきこと

今、緊急にすべきことは「金融機関」→「企業」のルートで資金を流すのではなく、今まで「金融機関」→「企業」→「金融機関」と循環している資金のうち「企業」→「金融機関」への流れを止めて企業内に資金を留めることである。

すなわち、現在借り入れている借入金の返済を留保し、中小企業からの資金の流出を止めることが緊急になすべきことである。なぜなら、いくら融資保証枠を増やしても、本当に資金を必要としている中小企業へ資金が円滑に流れていないし、借りられても先行き不透明のため返すメドが立たないのである。

融資保証制度は「金融機関」→「企業」の融資を進めるものであるが、金融機関に所要の手当てをしたうえ、この緊急保証制度の枠内に、さらに「1~3年」にわたる無条件「償還猶予」に対する保証制度を設けるべきである。

「アメリカ直下型グローバル地震」

この原稿を書いている11日の日本経済新聞に「中小企業資金繰り正念場」「深まる苦境・融資残高17ヶ月連続・資金繰りの指数最悪に」「金融庁、貸し渋り集中検査」という記事が載っていた。前日の10日には「東証7086円・終値バブル後最安値・26年ぶり低水準」「2月倒産戦後ワースト3」「倒産件数は10・3%増加」と発表されていた。

私は今回の景気後退は誰も予想もつかなかった「アメリカ直下型グローバル地震」だと感じている。今まで経験したことのないような規模とスピードで不気味な地鳴りを上げ幾重にも地震波が押し寄せてくる感じである。

小なりといえ中小企業も企業である限り生存していかなければならない。どんなに優良企業といわれようと、突然受注が途切れ、売上が減少し資金繰りが詰まれば、企業は倒産してしまうのである。

北風と太陽… 中小企業に血の通った対策を

この提案は「貸し剥し」と対極にあるもので、「北風と太陽」の寓話の現実的適応であり、「合成の誤謬」を回避する方法でもある。個別金融機関にとっては「貸し剥し」は合理的な行動であっても、信用システムの維持、金融システムや社会の安定化といった全体最適に反する行動である。

しかし、制度的な保証を与えることによって金融機関の行動を「償還猶予」へ転換することは、企業・金融機関・政府の三者の求めるものを同時に満たすことができると考える。

これは単に中小企業の苦境を救うだけではなく、金融機関にとっても中小企業への実質的融資残高の増加となる。また、今政府に求められている内需拡大に、絶大な効果を発揮するであろう。

11日の記事よれば、中小企業への貸出残高は182兆円とのことである。1年返済猶予すれば約15~20兆円の資金が中小企業の手の中に残り投資や企業活動に消費され内需を増加させ、2~3%のGNP押し上げ効果が期待でき、さらには中小企業の倒産は激減するし、いま、政府が必死で取組んでいる雇用の維持にも役立つ。

金と時間を得れば、新技術に挑戦し新たな事業展開も可能になる。中小企業の経営者は「百年に一度」「全治3年」の危機を乗り切るため、一人ひとりが行動を起こし、仲間を集め、諸団体も巻き込んで要望活動・陳情活動など『中小企業のことは中小企業で守る』行動を起こすことを願う。

LRパートナーズ代表社員 小川 湧三

 


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